テレビや書籍で頻繁に目にする「インフレ」という単語ですが、具体的にどのようなもので、どのような仕組みで引き起こされるものなのでしょうか。本連載では、「インフレ」の概要を説明します。

日本は2013年まで緩やかなデフレが続いていたが…

インフレ(インフレーション)とは、物価が持続的に上昇することです。その反対がデフレ(デフレーション)であり、物価が下落を続けることを指します。

 

日本はこれまで20年間にわたって緩やかなデフレが続いてきました。つまり、物価が上がることなく、逆に下がり続けてきました。一般消費者にとっては、欲しい物の値段がどんどん安くなるのでデフレは歓迎すべきものだと思われてきました。

 

しかし、日本のデフレは2013年で終わりを告げました。なぜならば政府と中央銀行(日本銀行)の両方が「年間2%のインフレを目標にして、そのための政策を打っていく」と宣言したからです。その結果、消費者物価指数(CPI)が上昇に転じました。

 

また、2014年4月からの消費税増税に従い、モノの値段が一律に上がっています。消費税率の上昇以上に値上がりした物品も少なくありません。

モノの価値や価格は「時代によって変わる」

なぜ、政府や日本銀行がインフレを目標にしただけで、実際にインフレが起きるのでしょうか。その疑問に答えるためには、まずモノの価値と価格について説明しなければなりません。

 

モノの価値、とひと口に言っても、見る人によって価値は変わってきます。例えば、私の目の前にある古びた万年筆は、リサイクルショップやフリーマーケットで売ろうとすれば100円の値段もつかないかもしれません。しかし、私にとっては祖父の形見なのでプライスレスです。いくら出されても売る気はありません。このように、モノの価値は人によって異なります。

 

では、価格はどうでしょうか。モノの価格というのは、売りたい人と買いたい人がいて初めて成立します。例えば、私がその万年筆を売りたいと思って、誰かが買いたいと思ったときに、初めて価格がつきます。

 

このとき、私は1万円や10万円といった価格をつけることも可能ですが、それでは買い手が現れないでしょう。例えば100円なら欲しいという相手が現れて、その値段で売ってもいいと私が考えて取引が成立したときが、そのモノに価格がつく瞬間です。

 

以上の例から分かるように、モノの価値や価格というものは、決して一定ではありません。日本マクドナルドは、同じメニューでも地域によって異なる価格設定をしていることで知られています。

 

もし、あなたが持っているモノの価格を知りたければ、最も手軽なのはインターネットのオークション(競り市)に出品してみることです。1円からスタートすれば、そのうちに何人かの入札があって、オークションが終了したときに、そのモノの価格が判明するでしょう。これを市場(マーケット)価格ということができます。

 

では、仮に私の万年筆がオークションにおいて100円で売れたとして、この万年筆の価値は100円であるといっていいでしょうか。現在時点のみでいえばそうですが、過去や未来にわたって100円であるとはいえません。もしかすると50年後は希少価値が出てプレミア価格がつくかもしれません。

 

また、プレミア価格がつくことがないとしても、いつまでも100円で売れるわけでもありません。なぜなら、100円というお金の価値そのものも常に揺れ動いているからです。

 

例えば、1989年に初めて3%の消費税が導入されるまで、100円には缶コーヒー1本の価値がありました。

 

2014年の現在、缶コーヒー1本の価格は130円になっています。ということは、100円には缶コーヒー1本分の価値がなくなってしまったのです。同じ100円でも、時代によってその価値が変わってしまうのです。

本連載は、2014年7月29日刊行の書籍『インフレ時代の投資入門』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

インフレ時代の投資入門

インフレ時代の投資入門

杉浦 和也・前野 達志

幻冬舎メディアコンサルティング

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