5―おわりに
本稿において確認した通り、若年層の現在の経済的状況や将来の見通しは良好とは言い難い。
少子化問題について検討する際、個人の結婚・出生の選択の自由は最大限に尊重しなければならない。しかし、個人、あるいは世帯の希望が経済的要因等によって歪められていないかは考慮する必要があるように思われる。
実際、はじめて少子化問題をテーマの1つに据えたことで注目を集めた、2023年の「年次経済財政報告」(経済財政白書)は、年収区分と未婚率の関係やその男女差から、経済環境の変化がライフスタイルや嗜好に影響を及ぼし、それが結婚行動に影響する可能性を示唆している。
このことを踏まえると、「新しい資本主義」における諸取組を推進し、構造的な賃上げを実現することは、少子化問題の改善という観点からも極めて重要であると言えるだろう。
また、「加速化プラン」によって、子育て世帯への経済的支援等を進めることもまた、重要性は高いと思われる。
しかし、構造的な賃上げ、あるいはその前提ともいえる三位一体の労働市場改革やそれに伴う経済成長の実現等は、残念ながら一朝一夕に達成することは難しいだろう。
一方で、「少子化は、我が国が直面する、最大の危機である」と示されているように、少子化対策は日本の喫緊の課題となっている。
そうであるならば、非正規雇用である等を含めた経済的な要因で、未婚であったり、子どもを持たなかったりしている若年層が結婚し、子どもをもつことができるよう、経済的に支援する施策を実施することも一考に値するのではないだろうか。
いずれにしても、少子化と若年層の経済的状況は関連しており、今後その双方が改善に向かっていくことが期待される。
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