(写真はイメージです/PIXTA)

日本では深刻な「少子化」が進み、2023年6月には「こども未来戦略方針」が閣議決定されました。少子化の原因として若年層の経済的不安などが挙げられます。そこで本稿では、ニッセイ基礎研究所の坂田紘野氏が、少子化問題を念頭に置きつつ、社会全般にみて若年層がどれほど経済的に苦しい状況に置かれているかについて解説します。

4―それでも経済的に苦しい理由

1│国民負担率の上昇

第一に挙げられるのが、実質賃金水準は上昇しているものの、それとともに、租税負担率と社会保障負担率を合計した義務的な公的負担である国民負担率も上昇している点だ。

 

直接税や社会保険料等の非消費支出が実収入を上回る水準で増加しているため、可処分所得の伸びは実収入よりも低い水準に留まっており、消費支出の増加にはつながっていない(図表7)。この点が、若年層にも経済的な苦しさをもたらしていると考えられる。

 

言い換えると、租税と社会保障の負担増大が、少子化の観点からは悪影響を及ぼしている可能性がある。財務省によると、1970年度には24.3%であった国民負担率(対国民所得比)は、2023年度には46.8%にまで増大する見通しだ。将来世代の潜在的な負担である財政赤字も加えると2023年度の見通しは53.9%に達する(図表8)。

 

 

確かに、税金や社会保険料を負担するのは若年層に限られているわけではなく、また、税や社会保険料は、所得再分配を通して国民に還元されてもいる。

 

しかし、社会保障給付の大部分は年金・恩給、医療、介護であり、これらは主に高齢者世帯に給付されている。そのため、世帯主の年齢階級別に所得再分配状況を確認すると、65歳未満ではマイナス、65歳以上でプラスとなっている。

 

若年層を含む現役世代の多くは、当初所得よりも再分配所得の方が少ない状況となっている(図表9)。

 

 

2│世代内格差の拡大

第二に、若年層、と一括りにできるほど、現在の若年層の経済状況は似通ってはいない点も指摘できるだろう。若い世代における経済状況の世代内格差は拡大傾向にある。そのため、貧しい若年層はかつてよりも経済的に厳しい状況に置かれていることが想定される。

 

格差の度合いを測るための指標としては、ジニ係数が広く用いられている。ジニ係数は、0から1までの値をとる、分布などの均等度を示す指標であり、0に近いほど分布が均等、1に近いほど不均等であることを示す。

 

厚生労働省の調査から各世代内における所得(当初所得)のジニ係数の推移を確認すると、中高年世代はジニ係数が小さくなる傾向がみられる世代が多いのに対し、30代が世帯主である世帯のジニ係数は、大きくなっている(図表10)。

 

これは、30代における労働所得の格差が大きくなっている、すなわち世代内格差が広がっていることを意味している。

 

 

格差の拡大という点においては、非正規雇用労働者の賃金が低いことが、依然として大きな課題であり続けている。正社員・正職員と比較して、非正規雇用に当たる正社員・正職員以外の労働者の賃金は、男女いずれの場合も低い水準に留まっている。

 

それに加えて、非正規雇用労働者の賃金カーブはほぼ横ばいに推移していることから、労働者にとって、将来賃金が上昇するだろうとの期待感も乏しいものとなってしまう(図表11)。結果として、労働者の抱く将来への経済的な不安は大きくなってしまう。

 

 

もっとも、将来の賃金上昇期待が乏しく、将来の経済不安を抱えているのは非正規雇用労働者に限った話ではないかもしれない。前述の図表4の通り、確かに20代においては男女ともに実質賃金水準は上昇傾向にある。

 

しかし、他の年代を確認すると、女性については社会進出が進んだこともあり全年代で上昇傾向が見られるものの、男性の実質賃金水準は中高年世代のほとんどで低下しているのが現状だ(図表12)。

 

次ページ5――おわりに

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    ※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
    ※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年11月2日に公開したレポートを転載したものです。

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