1.結果の概要:前期比はマイナス、前年比も0.1%増にとどまる
10月31日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏GDPの一次速報値(Preliminary Flash Estimate)を公表し、結果は以下の通りとなった。
【ユーロ圏20か国GDP(2023年7-9月期、季節調整値)】
・前期比は▲0.1%、市場予想1(0.0%)を下回り、前期(0.2%)から低下した(図表1)
・前年同期比は0.1%、市場予想(0.2%)を下回り、前期(0.5%)から低下した(図表2)
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想も同様
2.結果の詳細:ドイツの停滞が目立つ
ユーロ圏の23年7-9月期の成長率は前期比▲0.1%(年率換算▲0.4%)とマイナス成長となった。マイナス幅は限定的だが、コロナ禍以降で見ると最大のマイナス幅でもある。
また、ユーロ圏では22年10-12月期以降はほぼゼロ成長となっており(22年10-12月期は前期比▲0.0%・年率換算▲0.1%、23年1-3月期は前期比0.0%・年率換算0.2%、4-6月期は前期比0.2%・年率換算0.6%)、昨年夏(22年7-9月期)対比の実質GDPの水準(=前年比)は0.1%にとどまる。なお、コロナ禍前(19年10-12月期)対比では3.0%となった。
経済規模の大きい4か国の伸び率を見ると、前期比ではドイツ▲0.1%(4-6月期0.1%)、フランス0.1%(4-6月期0.6%)、イタリア0.0%(4-6月期▲0.4%)、スペイン0.3%(4-6月期0.4%)となり、イタリアは4-6月期から改善したが、他の3か国は4-6月期から悪化している。
昨年夏(22年7-9月期)対比の実質GDPの水準(=前年比)を成長率が公表された11か国について確認すると、アイルランド(▲4.7%)、エストニア(▲2.5%)、オーストリア(▲1.2%)、ドイツ(▲0.4%)、リトアニア(▲0.0%)、イタリア(0.0%)が夏以下の水準にとどまる(図表3の縦軸)。
また、コロナ禍からの回復具合で見るとドイツの遅れが目立っている(図表4)。
次にフランスとスペインは各国統計局(フランス国立統計経済研究所(INSEE)、スペイン統計局(INE))がGDPの詳細を公表しているので、以下で見ていきたい。
フランスの成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費0.7%(前期▲0.0%)、政府消費0.4%(前期0.2%)、投資1.0%(前期0.5%)、輸出▲1.4%(前期2.4%)、輸入▲0.5%(前期2.5%)となった(図表5)。
在庫変動の前期比寄与度は▲0.3%ポイント、純輸出の前期比寄与度は▲0.3%ポイントであり、輸出は弱含んでいるものの内需は底堅かった。
産業別の付加価値は、工業が▲0.2%(前期1.3%)、建設業が▲0.1%(前期▲0.3%)、市場型サービス産業0.1%(前期0.7%)、非市場型サービス0.1%(前期0.8%)となり、7-9月期は工業の弱さをサービス業が補う形となった。
より細かい業種では、工業のうち製造業が前期比▲0.3(前期1.2%)、サービス業のうち輸送業が前期比▲2.1%(前期▲0.7%)、居住・飲食業が前期比▲0.5%(前期0.9%)と弱かった。一方、情報業は前期比1.4%(前期2.0%)と高めの成長を記録した。
スペインの成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費1.4%(前期0.9%)、政府消費0.6%(前期1.6%)、投資▲0.4%(前期1.9%)、輸出▲4.0%(前期▲3.3%)、輸入▲3.1%(前期▲2.1%)となり、消費は高成長率が持続しているが、輸出の悪化が著しい(図表6)。
産業別には、工業が▲0.6%(前期▲1.2%)、建設業が▲0.6%(前期0.8%)、サービス業が0.9%(前期0.8%)だった。細かい業種で見ると7-9月期は芸術・娯楽業(11.9%、前期3.1%)の伸びが目立った。
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】