「この後妻！」と罵られ…夫の死を境に豹変した40代娘

ある日、筆者の事務所に高齢の女性から相続トラブルについての問い合わせがありました。とても焦っている様子だったため、急ぎ事務所に来ていただくと、その女性は大変興奮した様子で、事務所に入るなり、立ったまま堰を切るように話しはじめました。

「先生、娘が全財産を持ち去ってしまいました！　不動産の権利証も、通帳も、私の実印まで、全部です！」

ただ事ではない様子から、場合によっては緊急を要するかもしれないと思いつつ、筆者は応接室の椅子を勧めて話を聞きました。

高橋陽子さん（仮名）とおっしゃるその方によると、夫が亡くなったとたん、夫の連れ子である一人娘の美穂さん（仮名）の態度が急変し、予想だにしなかった行動に出ているというのです。

【家族構成】

陽子さん　：相談者（70代、女性、相続人）

被相続人　：陽子さんの配偶者・美穂さんの父親

美穂さん：陽子さんの配偶者の連れ子（40代、陽子さんと養子縁組済み）

【相続財産】

自宅不動産（約3,000万円、陽子さんと共有名義）

預貯金（約2,000万円）

美穂さんは「お父さんは息を引き取る数日前、全財産を私（美穂さん）に渡すといった」「お父さんは口頭で遺言した」との旨を主張し、陽子さんを大声で脅迫するだけでなく、襟をつかんで激しく揺する、引きずるという、暴力行為まであったそうです。

陽子さんは暴力的になった美穂さんに恐れをなし、いわれるがまま、自宅不動産の権利証や陽子さんの実印、亡き夫の預金通帳を渡してしまいました。

その後、権利証、実印、通帳を返してほしい、相続についておだやかに話し合いたいという希望をたびたび伝えたにもかかわらず、美穂さんはいうことを聞きません。あろうことか、陽子さんの家に何度も訪れては「この後妻！」などとののしる始末です。

行動は次第にエスカレートし、家の周りを徘徊し、近所の人に陽子さんの悪評を吹き込むだけでなく、玄関前で大声を上げるなどの常識を逸する行為を繰り返すようになりました。強いストレスを受けた陽子さんが知人に泣きついたところ、弁護士に相談するようアドバイスを受けたそうです。