口座の500万円、内縁妻の死で凍結された!「もともと私の金なのに」焦る内縁夫だが…遺産を巡り妻の実子が放った〈まさかのひと言〉【弁護士が解説】

口座の500万円、内縁妻の死で凍結された!「もともと私の金なのに」焦る内縁夫だが…遺産を巡り妻の実子が放った〈まさかのひと言〉【弁護士が解説】

ある男性は20年間にわたり、内縁の妻と生活を共にしていました。女性は専業主婦として男性から財布を預かり、とくに問題なく暮らしていたのですが、女性が亡くなったことで、男性は資産を根こそぎ失いかねない、危機的状況に陥ってしまいます。一体どういうことでしょうか。不動産・相続問題に強い山村法律事務所の代表弁護士、山村暢彦氏が解説します。

内縁関係の妻の死…妻の口座から預金が引き出せない

筆者の事務所に、60代の男性が相談に訪れました。亡くなった内縁の妻の財産について、非常に困った事態になっているということでした。

 

山田さん(仮名)とおっしゃるその方は、数ヵ月前に亡くなった内縁の妻である絵里さんと、20年ほど前から一緒に暮らしていたそうです。2人にはそれぞれ離婚歴があり、最初の結婚に懲りたことから再婚には消極的で、事実婚を選択しました。

 

山田さんと絵里さんの間には子どもはいませんが、絵里さんと前夫の間には2人の子どもがいます。しかし、絵里さんが山田さんと一緒に暮らしはじめたころから、子どもたちとの交流は途絶えているそうです。

 

「同居していた20年間、絵里は専業主婦で、私が生活費を渡し、絵里が自分の口座を使って管理していました。ところが絵里が亡くなり、内縁関係だった私には絵里の口座からお金を引き出すことができません…」

 

「あの口座のお金は、100%私が渡したお金です。500万円以上も積み上がっているのに」

 

このままでは、山田さんが稼いできたお金は、会ったこともない絵里さんの子どもたちのものになってしまいます。

「名義預金か否か」は税務署が決めること

このようなケースの場合、原則として、相続時点での預貯金の名義は内縁の妻になっているため、預貯金は内縁の妻の財産だと認定される可能性が非常に高いといえます。また、内縁の妻の財産として認定されると、相続で内縁の妻の子どものものになってしまいます。

 

対抗措置としては、お金の流れを洗い出し、その財産は元々山田さんのお金であったことを証明・主張するしかないのですが、それで山田さんがお金を取り戻せるのかといえば、原則論から考えると非常に難しいといえます。

 

読者の皆さんのなかにはこのケース例で、税務調査でしばしば問題になる「名義預金」を思い浮かべる方も多いと思います。

 

よく指摘されるのが、専業主婦である妻が夫のお金を自分の名義として積み上げるケースですが、名義預金とみなされるのは税務署が名義預金だと判断するからであり、私人同士で争う際に、資産が名義預金と認められることはまずありません。

内縁関係の相続問題は、高確率でトラブルに

山田さんにとっては厳しい状況ですが、そもそも籍を入れた配偶者であれば、ここまでの問題に発展することはありません。しかし、内縁関係の場合は「内縁を選んだのはあなたたちですよね?」という、自己責任論になりかねないのです。

 

法的にいえば勝ち目の薄いケースですが、山田さんの場合、絵里さんの子どもたちに確認をとったところ、肩透かしともいえる反応が返ってきました。

 

「20年も交流がなかったのに、いまさら関わりたくありません」

「興味がありません。財産は一切不要です」

 

子どもたちそれぞれから、上記のような返信があり、あっさりと解決することになりました。

 

そのため、弁護士である筆者が間に入り、金銭の流れに不正がないことを説明しつつ、相続手続きを進めることになりました。

 

経過報告の際、山田さんにそのことをお話しすると、心の底から安堵された様子でした。

 

しかし、仮に正規の相続人である絵里さんの子どもたちが「相続する」と主張した場合、山田さんが財産を取り戻すのは非常に難しかったと思われます。

 

このように、内縁関係での相続問題は難航するケースが少なくありません。困った事態を防ぐためにも、生前からの対策をおすすめします。

 

 

(※登場人物の名前は仮名です。守秘義務の関係上、実際の事例から変更している部分があります。)

 

 

山村法律事務所

代表弁護士 山村暢彦

 

 

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