「6,800万円の土地」一度は購入決めたが…買主「手付金は放棄するから購入やめたい」→裁判所が認めなかったワケ【弁護士が事例解説】

「6,800万円の土地」一度は購入決めたが…買主「手付金は放棄するから購入やめたい」→裁判所が認めなかったワケ【弁護士が事例解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

不動産の売買契約では、「買主が手付金を放棄する」または「売主が手付金の2倍を返却する」ことで契約を解除できるのが一般的です。しかし、買主が「手付金を放棄する」としているにもかかわらず、契約を解除できない場合も。いったいなぜなのか、弁護士の北村亮典氏が、実際の判例をもとに解説します。

裁判所「契約の解除は認めない」…いったいなぜ?

本件の事例は、東京地方裁判所平成21年9月25日判決のケースをモチーフにした事例です。この事例で裁判所は、

 

・買主が手付解除をする前に、売主が道路を含む隣接土地の境界を確定する作業をしたものであり、客観的に認識し得るような形で本件売買契約に定められた債務の履行行為の一部をしたものということができる

 

と述べて、買主からの手付解除を認めませんでした。

 

なお、この事例では、契約で確定測量の費用は買主負担とされていたので、買主側は境界確定の作業は「売主による履行の着手ではない」と争いましたが、この点についても裁判所は、

 

・境界確定に要する費用を買主が負担したからといって、売主らが上記作業をしたことが否定されるわけではない

 

として、売主による履行行為の着手を認めました。

 

残金決済・引渡期日までの期間も要因のひとつか

ちなみに、この事例は、売主が転居先の建物のリフォーム工事を進めていたという事情や、買主による手付解除がなされたのが、残金決済・引渡期日の9日前であったという事情もあったため、これらの事情も裁判所が結論を考える上で影響をおよぼした可能性があると言えます。

 

このように、具体的にどのような行為が「履行の着手」に当たるかという点は、本件のような個々の裁判事例を確認して判断していく必要があります。

 

※この記事は2019年10月8日時点の情報に基づいて書かれています(2023年11月6日再監修済)。

 

 

北村 亮典

弁護士

大江・田中・大宅法律事務所

 

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※本記事は、北村亮典氏監修のHP「賃貸・不動産法律問題サポート弁護士相談室」掲載の記事・コラムを、北村氏が再監修のうえGGO編集部で再編集したものです。

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