高田馬場駅近く「築60年の築古物件」オーナー、借主へ立退き依頼→拒まれ裁判に…裁判所が「立退料2億8,000万円の支払い」を命じたワケ【弁護士が解説】

高田馬場駅近く「築60年の築古物件」オーナー、借主へ立退き依頼→拒まれ裁判に…裁判所が「立退料2億8,000万円の支払い」を命じたワケ【弁護士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

賃貸借契約の解約または更新拒絶には「正当事由」が必要です。土地の再開発による建物の建替えのため、オーナーが借主に立退きを依頼したところ、借主がこれを拒否。訴訟に発展しました。建物は築60年と古く、理由も土地の再開発による建替えのため、正当事由といえそうですが、裁判所がオーナーに命じた「立退料」は、驚きの金額でした。弁護士の北村亮典氏が、実際の判例をもとに解説します。

貸借人との更新拒絶には「正当事由」が必要

賃貸人が賃借人に立ち退いてもらうためには、賃貸借契約を合意解約するか、合意解約に至らなかった場合には契約期間満了時に解約申入れ(更新拒絶)をするということになります。

 

もっとも、この解約申入れ及び更新拒絶には「正当事由」が必要である、というのが借地借家法の規定です。

 

この「正当事由」があるか否かは、

 

「賃貸人及び賃借人がそれぞれ建物の使用を必要とする事情のほか、賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及びその現況並びに賃貸人による立退料の支払の申出を考慮して判断すべきものである(借地借家法28条)」

 

とされています。

 

裁判でこの点が争いとなった場合に、この中で特に重要な要素は、「賃貸人及び賃借人がそれぞれ建物の使用を必要とする事情」と「立退料の支払の申出」であると考えられています。

 

賃貸人と賃借人それぞれが、その建物の使用を必要とする事情を比較し、賃貸人のほうがその必要性が上回れば解約(更新拒絶)を認める方向になりますし、賃借人のほうがその必要性が高ければ、解約が認められないか、もしくはその他の事情と「立退料」の金額を総合考慮して解約が認められることになる、というのが裁判例の傾向です。

 

この判断については、どのような事情があれば正当事由が認められるか、ということは、ケースバイケースの判断になるため、具体的な裁判の事例を参考にして見通しを立てる必要があります。

 

そこで、今回は、土地の再開発による建物の建替えを理由とした立退きに関するひとつの参考事例として、東京高等裁判所平成2年5月14日判決の事例を紹介します。

 

この事例は、

 

  • 築後約60年の木造2階建て建物
  • 賃借人は、建物で衣料品の小売店舗を約15年間経営
  • 物件の場所は、高田馬場駅に近く、明治通りと早稲田通りの交差点に近く、周辺は中高層ビルが多い

 

という事実関係のもとで、賃貸人側が、この賃貸建物を取り壊して中高層ビルを建設するために賃借人に対して更新拒絶の通知を出して、その明渡を求めた、という事案です。

 

この事例で、裁判所は、結論として、賃料の約700ヵ月分の立退料の支払いと引き換えに、賃借人に対しての明渡請求を認めています

 

次ページ裁判所が「賃料の700ヵ月の立退料」を命じたワケ

※本記事は、北村亮典氏監修のHP「賃貸・不動産法律問題サポート弁護士相談室」掲載の記事・コラムを、北村氏が再監修のうえGGO編集部で再編集したものです。

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