■上場会社数に占める経過措置適用企業の割合は約1割
[図表1]は、東証の公表資料から市場別の上場会社数と上場維持基準への適合計画を開示した企業数をまとめたものである。直近の2023年10月時点でもプライム市場上場1,658社のうち111社(全体の6.7%)、3市場合計だと3,825社のうち373社(全体の9.8%)が経過措置の適用を受けている。
次に、プライム市場に上場している経過措置適用企業について10月までの上場維持基準の進捗状況を確認する。
[図表2]は、2023年10月20日時点までに企業が開示している最新の「適合計画書」をもとに、流通株式時価総額、流通株式比率、売買代金の上場維持基準に対する進捗状況と計画期間である。
縦軸を赤枠で囲った数字は各項目のプライム市場の上場維持基準である。赤色は上場維持基準を達成した企業(適合見込みを含む)、灰色は未達の企業である。各項目の未達企業数は流通株式時価総額が76社、流通株式比率が25社、売買代金が14社あった。
■スタンダード市場への移行を選択した企業は177社
今回の経過措置の終了時期の明確化に伴い、特例措置として市場再編前に市場第一部に所属していたプライム市場上場企業を対象に、2023年4月1日~9月29日までの6か月間は審査なしでスタンダード市場へ移行できる機会が設けられた。[図表3]は、スタンダード市場への選択申請を決議した企業数の推移について月別にまとめたものである。
この特例措置を利用し、スタンダード市場への移行を選択した上場企業は累計で177社あった。
そのうちプライム市場上場維持基準未達企業は163社、上場維持基準に適合していたがスタンダード市場への移行を決めた企業は5社、もともと上場維持基準に抵触していなかったがスタンダード市場への移行を決めた企業は9社あった。
全ての上場維持基準に適合していながら、スタンダード市場への移行を選択した企業の主な理由は、上場維持基準への安定的な適合をあげている企業が多かった。
[図表4]は全ての上場維持基準に適合していながらスタンダード市場への移行を決めた企業14社について、直近の流通株式時価総額、流通株式比率、平均売買代金の平均値、中央値、最大値、最小値を集計したものである。
各項目とも最小値は上場維持基準をわずかに上回っているのみであった。特に流通株式時価総額は中央値でも110億円と上場維持基準の100億円に接近している。
上場維持基準に適合しながらスタンダード市場への移行を決めた企業の多くが、株価の動向次第ではプライム市場の上場維持基準に抵触するリスクがあったことがうかがえる。