■プライム市場上場維持基準に未達だった企業163社の状況
次に、[図表5]は今回の特例措置期間中にスタンダード市場を選択した企業のうち、プライム市場上場維持基準に未達だった企業163社について9月末までに公表した資料をもとに、流通株式時価総額、流通株式比率、売買代金の上場維持基準に対する進捗状況と計画期間をまとめたものである。
3つの基準の中では、流通株式時価総額が未達の企業が最も多かった。この中では2025年以降に計画期間を設定している企業や上場維持基準から大きく乖離した企業が多かったようだ。ただし、上場維持基準を達成目前の企業も見られた。
前述の上場維持基準に適合しているのにスタンダード市場への移行を決定した企業同様に、安定的に基準を上回るためにかけるコストや今後の上場廃止リスクを検討した結果、スタンダード市場への移行を決断したものと思われる。
■局所的な突風で終わらないためには
今回の東証の市場再編は、当初はほとんどの上場企業に影響がなかった。それでも各市場の上場維持基準に抵触した経過措置適用企業だけは、大きな変革をせまられ、突風にあおられたような状況だったのではないだろうか。
具体的な取組みにより企業価値が向上し上場維持基準に適合した企業もあれば、プライム上場企業のなかには自社の企業規模や業務内容をもとに再検討した結果、特例措置を利用してプライム市場からスタンダード市場への移行を選択した企業もある。
上場維持基準は安定的に上回らなければならないため、上場維持基準当落線上の企業にとっては適合したから一安心とはいえないだろう。
とはいえ、今回、経過措置適用企業の取扱いに道筋がついたところで、現在は各市場ごとのコンセプトに沿って上場企業全体が実際にどのように企業価値を向上していくべきかに焦点が集まっている。
今回の市場再編が局所的な突風で終わらずに、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応や英文開示の拡充等のより幅広い投資家への適宜適切な情報提供を通して、プライム市場上場企業を中心に中長期的な企業価値向上と株価上昇につながることが期待されている。
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