(写真はイメージです/PIXTA)

東京都が2013年に行ったマンション実態調査結果のうち、「日常管理の問題」では「マンション管理に無関心な居住者が多い」が1位でした。マンションの管理を怠ると、どのような問題が起こるのでしょうか。本稿では、ニッセイ基礎研究所の渡邊布味子氏が、分譲マンションの「管理組合」に積極的に参加することの重要性について解説します。

役員以外の組合員も管理に積極的であるべきだ

資産運用において、一般の素人が運用のプロ等の他人に判断や運用を丸投げする場合は、そうした資産運用を任される運用会社等は、政府や自主規制団体による厳しい規制を受ける。

 

そういう厳しい規制があっても投資信託等の運用商品を選ぶのは各個人であり、結果は自己責任となる。自分では何もせずに他人に丸ごと資産運用を任せるのは他人に通帳と印鑑を預けるのと同等のことであり、そのことのリスクの高さは論じるまでもない。

 

マンション所有では良好な管理をすることが、長期に亘り良い居住空間や環境を維持し、マンション自体の価値を守るためには不可欠であり、資産運用と同様にすべてを他人任せにすべきではない。

 

役員でない組合員であってもマンション管理に積極的に関わるのは当然であると認識すべきであろう。最低でも、年に1度程度の総会への出席はもちろん、総会の開催時期ではなくてもマンションの共用部分の清掃や維持状況等には気を配るべきだ。

 

はじめは専門的なことでなくてもいい。各所有者が普段住んでいてマンションに不便なところはないか、今ある設備に不具合はないかなどに気を付けるなど、簡単なところからはじめればよい。

 

また、マンション管理においてはなるべく多くの組合員が今の状況を理解し、話し合い、合意形成するのが望ましい。理事会の役員は皆の意見のとりまとめ役であって意思決定者にしてはならない。

 

あくまでも、管理をどうするかは大半のマンション所有者の意思表明による多数決によるべきである。確かにマンション内の住戸数が多いほどそれぞれの住戸所有者の意見や立場は多様となり、意見を1つに集約する作業は大変で、理事長等の役員方の負担も大きなものになるが、マンションの良好な管理を維持するためには避けては通れない。

 

こうした役員方には、それ相応の感謝や報酬があってしかるべきなのかもしれない。しかし、そうした場合であっても理事会の行動や意思決定はマンション所有者が我が事として十分な関心を持つべきであろう。

 

分譲マンションは戸建てに比べて維持管理が簡単だから選択したという人も多いと思うが、戸建てと同様に快適な居住空間や環境を維持するのは管理組合ではなく、同じマンションに住む住人や所有者であることを認識すべきである。

 

戸建ては自己責任で自分が決断すればなんとか対応できるが、ある程度大きな分譲マンションでは実は自分だけでは何もできない。従って、日頃からマンション管理について住民同士でのコミュニケーションを良好にし、共通認識を醸成し、修繕計画と資金負担について合意形成しておくことがとても重要となる。

 

大規模修繕が必要となってから、修繕計画や資金手当方法を慌てて議論し始めてももう遅いことが多い。住民の間での合意形成に時間がかかったり、合意自体ができなかったり、資金の手当てができなかったりするリスクが高くなる。

 

自分が現在役員でなかったとしても、楽をして他人任せにせずに、日頃から皆で負担を分け合うほうが、結果的に将来の合意形成が楽になり、長期的に円滑なマンション管理を実施することができる。

 

そして、マンション管理を円滑に行うことができれば、各々の組合員が所有するマンションはより長期的に快適に暮らすことができ、それぞれの価値もより長く維持できることになるだろう。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年10月25日に公開したレポートを転載したものです。

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