管理に無関心な組合員が多いと、マンションの資産価値に悪影響が生じる場合がある
しかし、多くの組合員が理事会に任せきりでマンション管理に無関心でいると、マンションの資産価値に悪影響が生じる可能性が高くなる。具体例をいくつか考えてみよう。
(1) 理事長等の役員の負担が増し、なってもよいという人がいなくなる
分譲マンションの管理では理事長は必ず選ばなければならない。理事長の権限は強い反面、マンション管理に無関心な組合員が多いほど、真面目な理事長や理事には多大な負担がかかる。
こうした場合、理事長・理事に積極的になりたい、なってもよいという人は次第にいなくなる可能性がある。もし、管理組合の中心である理事長が仕方なくやっている場合、必要なマンションの修繕等がなされない等の問題が生じる可能性が高くなり、マンションの住民とのコミュニケーション等を含めてマンション管理もうまくいかなくなるかもしれない。
また輪番制でも、自分の任期中は頑張る人もいるだろうが、運営管理の継続性確保は案外難しく、次に述べるように、任期中は積極的には何もしないという事態になりかねない。
(2) 問題が先送りにされる
マンション管理に無関心な組合員が多く、理事会も運営に消極的な場合は、問題が生じても問題解決が先送りにされてしまう可能性が高くなるかもしれない。
マンション管理では時間をかけても構わない事象もあるが、エレベータ-の故障等、迅速な対応が求められる事象も少なくない。また必要な時期に大規模修繕実施の意思決定がなされない場合は、マンション全体の建物価値が十分に維持できず、長期的な劣化速度が早くなる可能性が高まるだろう。
(3) 理事会・理事長らの誤った判断を抑制できない
管理組合の重要な意思決定を行うのは総会であり、組合員である所有者全員で組織される。
総会への参加は代理人でもよい3。マンション管理に無関心な組合員が多いと、招集状の出欠確認で「本人は欠席、理事長を代理人とする」という趣旨の選択肢を選ぶ人が多くなるだろう4。
議決権の大半が理事・理事長に委ねられた場合、一般の組合員は反対する機会を失うことになり、理事会・理事長が全てを決めることが可能となる。仮に理事長や理事会が善意であり、最良だと判断した選択であったとしても、マンションの価値維持には良くない判断かもしれないし、一部の組合員には都合の悪い選択であるかもしれない。
あとから、そんなはずではなかったと言おうとしても、実際に変更工事や修繕工事が始まってしまえば現実的には止める方法はないし、最悪の場合は修繕積立基金の残高に影響が出る可能性もある。
さらに、長期間に亘って理事長に全てが一任されている場合、万が一、理事長に悪意があると、誰からも牽制されないので、修繕積立金の私的流用等のリスクも出てきてしまう。
3 組合員は、総会の議決権を代理で行使することができる。代理人となることができるのは(1)組合員の配偶者・実父母・子、(2)同じ住戸に同居する親族、(3)他の組合員(理事・理事長を含む)である 。
4 管理組合の運営が不適切で、そもそも総会が開催されない場合も考えられる。