(※写真はイメージです/PIXTA)

労働時間の見える化や有給休暇の取得の義務化など、働き方改革が推し進められている一方で、人手不足の中小企業などでは、長時間労働が課題となっているのが実情です。会社から長時間労働を強いられるものの、残業代が支払われないなどのケースも少なくありません。そこで実際にタクシードライバーの方のケースをもとに、未払い残業代などの労働問題について杉本拓也弁護士に解説していただきました。

結論として藤田さんに残業代が支給されるかは、変形労働時間制の有無や実際の藤田さんの勤務表に基づく労働時間等を確認する必要がありますが、いずれにせよ法定労働時間を超えて勤務している場合は、残業代を請求できることになります。

 

次に、②募集要項で支給されると言われていた保証金や祝金の不支給の問題についてですが、やはりまず雇用契約書と就業規則を確認する必要があります。雇用契約書や就業規則において一定の要件を満たした場合に支給されることが規定されていれば、藤田さんが当該要件を満たしていれば支給することを請求できます。

 

また、求人票には記載されていたが雇用契約書等に記載がない場合は、当然に求人票の内容が労働契約の内容にはなりませんが、「採用時に会社と応募者間で、求人広告等の内容を変更すると合意したと認められる特段の事情がない限り、求人広告の内容は労働契約の内容となる」と判断された判例があります。

 

これによると、労働契約書に保証給・祝金の規定がなくても、求人票で支給されると謳われていた場合、請求できる可能性があると言えます。

残業代等、賃金の問題は弁護士に相談

残業代の問題は、雇用契約書や就業規則を確認する必要があり、変形労働時間制や固定残業制度が導入されている場合は、残業代の請求の可否の判断や、残業代の計算も複雑になります。

 

近時の事例で多いのは、固定残業代の問題です。固定残業代とは、一定時間分の時間外労働、休日労働および深夜労働に対して定額で支払われる割増賃金のことを言いますが、固定残業制度が有効となるためには、固定残業代を除いた基本給の額、固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法、及び固定残業時間を超える時間外労働について割増賃金を支給する旨が、雇用契約書等で明確に規定されている必要があります。

 

固定残業代の規定が無効である場合は、固定残業代として支給していた賃金を含めた金額を基礎賃金とし、法定労働時間を超える時間について残業代の請求が可能であり、多額の請求が可能な事案もあります。

 

残業代の問題は、弁護士に相談することで、就業規則や雇用契約書を確認してもらい、会社に対して実際の労働時間のわかる資料を開示させることで残業代の請求がどのくらい可能かという見通しが立てられるでしょう。

 

また、ご自身で労働基準監督署に相談するという方法もあります。監督官は会社との交渉を代理してくれるわけではありませんが、残業代や手当等の賃金の未払いについて理由があると判断した場合には、会社に対して指導をする結果、支払いがなされることが期待できます。
 

 

杉本 拓也

弁護士

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