これまでの「地政学イベント」からわかること
①調整期間は短く、調整幅も限定的
[図表1、2]は、第2次大戦後のおもな地政学イベントのリストです。
この限定されたデータからわかることは3つです。
第1に、多くの地政学イベントにおいて、金融市場は比較的早い段階で回復しています。
[図表1、2の最右列]をみると、株価は90日以内に元の水準を回復することが多く、下げ幅もさほど大きくありません。多くのイベントが、①米国株式市場にとっては「対岸の火事」とみなされたり、②長期化・泥沼化・膠着化するなかでしだいに材料視されなくなったりすることがあるのかもしれません。
[図表3]は、[図表2]のリストから「ベルリンの壁崩壊」を除いた過去25回の地政学イベント前後における、米国株式の動きをすべて取り出したものです。1973年の第4次中東戦争や1990年の湾岸戦争は下落幅が比較的大きくなりました。
[図表4]は、同過去25回の地政学イベント前後における米国株式の「平均的な動き」を取ったものです。平均すると30日(暦日)で、株価はイベント発生前の水準を回復しています。あくまで平均です。
②地政学イベントが「景気後退のきっかけ」になることは多くない
第2に、地政学イベントが「景気後退のきっかけ」になることは多くありません。
景気後退の「きっかけ」になる場合は、資源価格の急騰(≒重要な生産要素の供給ショック)を伴っていることが重要なポイントかもしれません。たとえば、1973年の第4次中東戦争と1978年からのイラン革命に伴う2回の石油ショック、そして1990年の湾岸戦争です。
他方で2001年の米同時多発テロは(後からみれば)景気後退のなかで生じています。原油価格は航空需要の低迷で落ち込みました。
いまはどうかと言えば、気候変動対策やエネルギーの転換に追加の説得力を持たせるためには、高い資源価格が必要かもしれません。