(※写真はイメージです/PIXTA)

不動産収益の根幹である「家賃」。アパート経営において、さまざまな理由でエリア相場以下の水準の家賃設定を続けているオーナーも少なくありません。オーナーが「エリア相場並みの家賃が欲しい」と考えたとき、法的手段で値上げを実現することは可能なのでしょうか? 入居歴の長い住人や、オーナーチェンジ物件での値上げについて、賃貸・不動産問題の知識と実務経験を備えた北村亮典弁護士が解説します。

借主が家賃値上げを拒否!オーナーがとれる対応策

では、賃料を増額したいオーナー側として、もし賃借人と賃料増額の合意ができず、上記の借地借家法32条を使って賃料の増額をしたい場合は、具体的にどのような手順で手続きを進めることになるのでしょうか。

 

1.不動産鑑定士・不動産業者に相談

まずは、不動産鑑定士若しくは不動産業者に依頼して、現在の賃料について上記1から3のどの場合に該当するのか、また具体的に増額すべき金額についての見解をもらうのがいいでしょう。そのうえで、賃借人に対し「〇〇を理由に賃料を〇〇円増額する」という内容の文書を内容証明郵便で送付し、賃料の増額を請求します。

 

この請求に対して、賃借人側が協議に応じて合意できればそれで解決となりますが、賃借人側がなお増額に応じない場合は、オーナーは簡易裁判所に「賃料増額請求の調停」を申し立てる必要があります。

 

2.調停手続き

調停についての具体的な説明はここでは省きますが、簡単にいいますと「裁判所が間に入った話合いの場」というものです。

 

この調停の手続きにおいては、不動産鑑定士が裁判所の調停委員に選任される場合が多いです。そのため、この調停委員の意見も踏まえながら、賃貸人と賃借人が賃料の増額について合意できるかどうか話し合いを行うこととなります。

 

3.賃料増額請求の訴訟

この調停の手続でも合意ができなかった場合、次にオーナーは、裁判所に「賃料増額請求の訴訟」を提訴する必要があります。

 

この訴訟では、裁判官が双方の主張や賃料の増額に関わる資料を検討したうえで、オーナー側が求める賃料の増額金額が相当か否か、相当でない場合に具体的に増額が認められるべき金額(もしくは増額を認めないこと)について判断します。

 

なお、訴訟では、裁判所が選んだ不動産鑑定士によって賃料額の鑑定をされることが多く、裁判官もその結果を尊重して増額の金額を判断します。また、この際の不動産鑑定士の報酬(通常は50万円以上)は裁判所が負担してくれるものではなく、裁判に負けた側が負担すべきとされることが実務上一般的です。

 

そのため、賃料の増額が認められた場合は賃借人側が、賃料の増額が認められなかった場合(もしくは僅少だった場合)は賃貸人側が負担するよう裁判所から命じられます。

 

このように調停や訴訟まで進んでしまうと、時間のみならず訴訟費用もかさんでしまう場合があります。

 

したがって、オーナー側としては極力紛争になることは避け、協議の段階で穏便に賃借人に賃料増額に応じてもらえるよう、増額交渉のタイミング賃料増額の根拠となる資料を十分に検討し、協議を進めていくことが望ましいでしょう。

 

 

監修

北村 亮典氏

こすぎ法律事務所

弁護士

 

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本記事は『アパート経営オンライン』内記事を一部抜粋、再編集したものです。

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