※画像はイメージです/PIXTA

亡くなった人の借金を負担しないで遺産相続を済ませるには、相続放棄をすることが一般的です。しかし、それ以外にも限定承認という選択肢があります。一体どのような制度なのでしょうか。本記事では、相続放棄との違いや、手続きの方法、税務上の注意点を中心に、限定承認について解説していきます。

限定承認する場合の手続きの流れ

限定承認は、家庭裁判所への申し立てののち、遺産を清算(換金)して借金を返済するという流れで行われます。一連の手続きを自分だけで行うことは難しく、弁護士や司法書士に依頼するほうがよいでしょう。この章では、限定承認の手続きについて簡単にご紹介します。

 

家庭裁判所への申し立て

限定承認をするには、相続人が全員で家庭裁判所へ申し立てをします。相続放棄した人がいれば、その人は除きます。申し立ての期限は、相続があったことを知ってから3ヵ月以内です。通常は、死亡から3ヵ月以内と考えてよいでしょう。

 

この3ヵ月という期間は、遺産と借金がいくらあるかを調べて限定承認をするかどうかを判断するための熟慮期間とされています。熟慮期間のうちに限定承認すべきかどうかを判断できない場合は、家庭裁判所へ申し立てて期限を延長することもできます。

 

限定承認の申し立てに必要な書類や費用などは次のとおりです。

 

手続きの期限 相続があったことを知った日から3ヵ月以内(延長も可能)
必要な書類 限定承認の申述書(様式と記入例:裁判所|相続の限定承認の申述書
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
被相続人の住民票除票の写しまたは戸籍の附票の写し
相続人全員の戸籍謄本
(その他相続人で死亡している人がいる場合は、死亡の記載がある戸籍謄本または出生から死亡までの戸籍謄本も必要)
必要な費用 収入印紙800円分(申述書に貼付)
連絡用の郵便切手
提出先 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
(参考:裁判所|裁判所の管轄区域

 

遺産の清算手続き

家庭裁判所への申し立てが受理されれば、遺産の清算つまり換金の手続きを行います。相続人が1人のときはその人が限定承認者として清算手続きをします。相続人が複数いる場合は、家庭裁判所により相続人の中から選任された相続財産清算人が清算手続きをします。

 

遺産の清算手続きの詳しい内容については割愛しますが、おおむね次のような流れで進められます。

 

・限定承認者は5日以内に、相続財産清算人は10日以内に「限定承認をしたこと及び債権の請求をすべき旨の公告」を官報に掲載する手続きをします。

・その後、預金の解約、不動産の競売などをして遺産を換金します。必要な遺産があれば、相続人が家庭裁判所に鑑定人の選任を申し立てることで優先的に買い取ることができます(先買権の行使)。

・換金した遺産から借金を返済します。遺産が余れば相続人どうしで遺産を分け合います。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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