(※写真はイメージです/PIXTA)

成人した子どもが実家で暮らし続けることは、必ずしも問題ではありません。家賃を抑えて貯蓄する、親の近くで支え合うなど、事情は家庭によって異なります。しかし、親の定年や収入減が近づくなかで、生活費の負担や将来の住まいを話し合わないまま時間が過ぎると、親子関係に深い溝が生まれることもあります。

「貯金しているなら安心」そう思っていた父だが…

修司さん(仮名・63歳)は、都内近郊で妻と37歳の息子・亮太さん(仮名)と暮らしています。修司さんは再雇用を見据えながら働く会社員で、現在の年収は約430万円。住宅ローンは完済していますが、定年後は収入が下がる見込みで、老後資金に十分な余裕があるわけではありません。

 

亮太さんは正社員として働いており、貯金は約1,200万円あります。毎月数万円を家に入れ、浪費している様子もありません。修司さんも最初は「実家にいる分、しっかり貯めているならいい」と考えていました。親元にいるからといって、自立していないと決めつけるつもりはなかったのです。

 

それでも亮太さんの暮らしぶりを見るうちに、修司さんの気持ちは少しずつ変わっていきました。食事は母親が用意し、洗濯もほとんど任せきり。休日は自室で過ごすことが多く、将来の住まいや結婚、親の介護について自分から話すことはありませんでした。

 

妻が「亮太も仕事で疲れているから」とかばうたび、修司さんは黙っていました。しかし定年が近づくにつれ、このままの生活が続くことへの不安は大きくなります。親が元気なうちは問題が表面化しなくても、どちらかが倒れれば家事や生活の負担は一気に変わります。

 

内閣府『令和7年版高齢社会白書』では、65歳以上人口に占める一人暮らしの割合は男性18.3%、女性25.4%と推計されています。高齢期には、夫婦だけ、あるいは一人で暮らす期間が長くなる可能性があります。修司さんも、自分たちがいつまでも息子の生活を支え続けられるわけではないと感じていました。

 

ある日、修司さんは家計簿を見ながら妻に言いました。

 

「俺たちの老後も、そんなに余裕があるわけじゃないんだぞ」

 

妻はうなずきながらも、「急に追い出すようなことは言わないで」と答えました。修司さんも、亮太さんを責めたいわけではありません。ただ、家にいることが当然になっている現状を、どこかで変えなければならないと感じていたのです。

 

 

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