譲渡所得の準確定申告が必要な場合も…税制面の注意点
限定承認をするかどうかを検討するときは、譲渡所得に対する税金にも注意が必要です。限定承認をすると、税制上は亡くなった被相続人から相続人に財産を売却したことになり、譲渡所得(みなし譲渡所得)に所得税が課税されます。遺産に土地や株式など値上がりするものがあれば、実際に売却していなくても含み益に税金がかかります。
なお、相続人が遺産を相続してのちに売却することになった場合は、売却益計算のための取得価額は相続時の時価になります。もともとの取得価額から売却益を計算すると、限定承認をしたときの含み益の部分が二重課税になってしまうからです。
被相続人は自分で所得税を申告することはできませんが、申告は免除されません。被相続人の死亡から4ヵ月以内に相続人が準確定申告することになります。
みなし譲渡所得への課税で発生した所得税は被相続人の債務になります。借金と所得税を含めた債務が遺産より多い場合は、相続人は遺産を超える部分を引き継がなくてよいため、納税は免除されます。
一方、遺産より債務が少なく遺産が余る場合は、所得税を納めなければなりません。単純承認ではみなし譲渡所得への課税はないため、限定承認をすると所得税の分だけ損をすることになってしまいます。
限定承認をする場合では、たとえ遺産が余ったとしても相続税が課税されることはあまりありません。相続税には3,000万円以上の基礎控除額(3,000万円+600万円×相続人の数)があり、遺産が基礎控除額を上回るほどにはならないからです(多額の遺産が余るのであれば通常は単純承認をして限定承認は行いません)。
ただし、死亡保険金を受け取った場合は注意が必要です。死亡保険金には相続税がかかりますが、借金と相殺することはできません。基礎控除額と死亡保険金の非課税限度額(500万円×相続人の数)の合計を超える部分について、相続税の申告と納税が必要になります。
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