(写真はイメージです/PIXTA)

9月20日、英中央銀行のイングランド銀行は金融政策委員会を開催し、21日に金融政策の方針を公表しました。本稿では、ニッセイ基礎研究所の高山武士氏が、公表された金融政策の方針を分析し、英国の政策金利や議事要旨の概要について解説します。

4.議事要旨の概要

議事要旨の概要(上記金融政策の方針で触れられていない部分)において注目した内容(趣旨)は以下の通り。

 

(通貨・金融環境)

・9月のMPC以降の政策金利経路について、市場予測は低下した

・市場価格はこのMPC直後に5.5%程度まで上昇しピークとなり、その後3四半期は維持されるとされていた

・前回のMPC以降、1年先の1年物OISレートは0.70%ポイント程度低下した

・政策金利は現在、今後3年間平均で5%をやや下回る経路となった

・市場参加者調査(MaPS)によると、今後1年間の英国債残高の削減規模は市場参加者の中央値で1000億ポンドだった

・公的データおよび企業調査を総合して、中銀スタッフは23年7-9月期のGDP成長率の見通しを8月報告書の0.4%から0.1%とした

 

(供給・費用・価格)

・雇用関連指標は経済活動の鈍化を背景に軟化している

・労働力調査の雇用者数は2-4月期に0.8%増、5-7月期で0.6%減少した

・この指標は期ごとの変動が大きく、労働力調査のサンプルサイズと回答率は低下している

・中銀エージェントの報告では、企業は、人員削減計画はほとんどなく、総じて従業員数を安定的に維持しようとしている

・しかしながらKPMG/RECの雇用報告では、企業の新規従業員採用は減少している

・S&P Global/CIPSの総合雇用PMIは8月に落ち込んだが、歴史的な平均付近にある

 

・週平均賃金上昇率はHMRC給与所得者、労働力調査と意思決定者パネル(DMP)など、週平均賃金上昇率ほどの高さではないが、安定して高い傾向にある指標と整合的とは言い難い

・中銀エージェントの報告では、年間の平均賃金は6-6.5%であり、今後は高い生活費を補うための追加支払が減少し、緩やかに低下すると見ている

 

・コア財インフレの低下は8月報告書対比での下振れの3分の2を占めている

・この最新情報のいくらかは、中古車価格の特異な変動によって占められている

・その他のコア財の下振れは、非石油生産者物価が頭打ちとなり、これが以前に想定されていたよりも早く消費者物価に伝達されたという、最近の原材料の上昇圧力の緩和を示している

・しかしながら、石油価格の最近の急上昇が継続すれば、今後数か月はCPIインフレ率のエネルギーの寄与が8月の見通しよりも高まるだろう

 

  • 残りの8月対比の下振れ要因はサービス物価である

・サービスインフレは7月には予想外に31年ぶりとなる7.4%まで上昇したが、8月には6.8%に急低下した

・7月の上昇と8月の反落は航空運賃や宿泊費に関連しており、これは夏季休暇期間により変動幅が大きくなる傾向がある

・こうした旅行関連要素を除いたサービスインフレはより安定し、また引き続き高い

・ただし、サービスのより広範な品目でも下振れが見られた

 

中銀スタッフによる、サービスインフレの共通変動で定義される基調的なインフレ指標も低下しはじめた

・S&P Global/CIPSのサービス部門の投入産出価格PMIは引き続き過去平均に向かって下落を続けており、中銀エージェントの報告では、賃金上昇圧力は消費者向け対面サービス産業で引き続き高いが、他の費用上昇圧力は緩和している

 

(政策金利決定)

・今回の会合では5人の委員が政策金利を5.25%に維持すると判断した

・労働市場には緩和の兆しがある

・週平均賃金上昇率の最近の加速は、注目に値するが他の賃金指標とは整合的ではない

・ひとつのデータに重きを置きすぎないことは重要だが、CPIの総合とサービスインフレは予想以上に低下した

・経済活動に関して、銀行エージェントはより弱気になっており、8月PMIはGDPの下落と整合的でもある

・これを主張した委員のうちほとんどは、最近の動向は政策金利を引き上げるより据え置いた方が、より良くバランスがとれると判断した

・持続的な2%目標への回帰に重要な進展が見られるまで、引き締め的な姿勢を維持することが正当化されると見ている

・しかしながら1名は、引き締めすぎるリスクが積みあがっており、政策の急転換を必要とするような生産損失や変動の可能性が高まっていると見ている

・金融政策効果のラグにより、過去や最近の利上げの影響が依然として顕在化していないと見ている

 

・4人の委員が今回の会合で政策金利を0.25%引き上げ、5.50%にすることが妥当だと判断した

・経済活動には鈍化の兆しがあるが、消費者信頼感は持ちこたえており、実質の家計所得は上昇が始まり、生産の先行指標も引き続きプラスを維持している

・労働市場は引き続きひっ迫しており、中期的な均衡失業率が上昇した可能性があり、緩和速度も鈍化している

・賃金上昇率・サービスインフレの指標も中期的に2%目標が持続するという目標と一致する水準を上回り続けている

・最新のサービスインフレは予想以上に低下したが、これは上振れサプライズに続いて、主に変動幅の大きい要素によりもたらされている

・これらの委員は、これらが総じてより持続的なインフレ圧力の証拠だと判断している

・金融引き締め姿勢がより経済活動の重しとなっているものの、この会合における政策金利の0.25%ポイントの引き上げが、より強いインフレ圧力へのリスクに対処し、中期的な2%目標の持続に向かうために必要である

 

(運用上の考慮事項)

・初年度の量的引き締めの経験を踏まえて、委員会は今後12か月の英国債削減ペースを昨年の800億ポンドから1000億ポンドに緩やかに加速させることを支持する要因について検討した

・まず、市場環境と、1000億ポンドの英国債残高の削減のための英国債売却を市場が吸収する能力の評価の結果、このペースは市場機能を破壊しないと示唆された

・次に、今後1年間における1000億ポンドの英国債残高の削減は、APF(資産購入策)の英国債償還が増加することを考慮すれば、概ね、その売却額は昨年から変化しない

・23年8月の報告書に示されたように、MPCは英国債残高の削減総額に焦点を当てており、償還と売却が含まれるため、償還額の変化は売却額の変化に影響を及ぼす可能性がある

・しかし、委員会は売却ペースの継続性にやや重きを置いた

・第3に、昨年のAPFの英国債800億ポンドの削減は、ほぼ完了している200億ポンドの社債削減と供に実施されており、昨年のAPF削減の規模はほぼ1000億ポンドとなる

 

・MPCは予定された年次見直し以外で英国債残高の削減計画を修正することに対しては高い基準があることを再確認した

・これは、金融政策姿勢の調整には、政策金利を積極的な政策手段とすべきであり、APFの削減は予測可能であるべきであるとの原則と整合性を保つためである

・この基準に達しているか判断する際には金融安定委員会(FPC)も、金融安定の評価でその役割を担うことになる

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年9月22日に公開したレポートを転載したものです。

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