(※写真はイメージです/PIXTA)

1840年に、イギリスが宣戦して始まった「アヘン戦争」。インドで生産させたアヘン(=麻薬)をイギリスが中国に密輸したことが発端ですが、なぜイギリスは麻薬の密輸に踏み切ったのでしょうか。また、なぜ戦争に発展したのでしょうか。『大人の教養 面白いほどわかる世界史』(KADOKAWA)の著者である河合塾講師の平尾雅規氏が解説します。

イギリスが望んでいた「自由で対等な貿易」

注意したいのは、アヘン問題はあくまでも戦争の口実であり、イギリス側の目的は「自由で対等な貿易を清に認めさせること」にある点です。

 

蒸気船の軍艦を派遣したイギリスが帆船※1主体の清軍に勝利し、南京条約が結ばれました。5港を開かせて公行も廃止させ、賠償金もせしめます。追加で認めさせた領事裁判権※2と関税自主権の喪失も重要。

※1 ジャンク船

※2 イギリス人が清で犯罪を犯した場合、イギリスの法で裁く

 

前者によって、イギリス人はいわば「中国の警察に逮捕されない特権」を得ます。後者は保護貿易をさせないための措置ですね。ペリー来航以降の日本も押し付けられた、不平等条約の代表格です。

 

アヘン戦争勝利も、綿布の輸出伸びず「アロー戦争」へ

しかしアヘン戦争後も、イギリスの期待ほどには綿布の輸出は伸びませんでした。開港場の増加を望んだイギリスが、戦争の口実を探していた折に起こったのがアロー号事件。「香港船籍※1のアロー号に中国の官憲が臨検に入り、しかもイギリス国旗を侮辱した!※2」がイギリス側の言い分。

※1 南京条約でイギリス領になっている

※2 実際には船籍の登録期限が切れていた

 

先に戦争ありき、という下心がミエミエなんですが、イギリスが宣戦してアロー戦争が始まりました。なお、ナポレオン3世も共同出兵しています。

 

英仏連合軍は勝利し、最終的に北京条約が結ばれました。開港場が増え、外国公使の北京駐在が認められます。これに対応して、清は総理各国事務衙門[がもん](総理衙門を設置しました。

※ 外務省に相当する

 

主権国家体制といえば「互いに対等」につきあうわけで、こうしてイギリスが望む「自由で対等な貿易」が実現しました。

※ すでに南京条約で「対等国交の原則」は認めさせている

 

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※本連載は、平尾雅規氏による著書『大人の教養 面白いほどわかる世界史』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

大人の教養 面白いほどわかる世界史

大人の教養 面白いほどわかる世界史

平尾 雅規

KADOKAWA

「なぜ、戦争や紛争が絶えないのか?」「なぜ、国によって考え方・風習・生活が違うのか?」 ……答えは高校時代に習った世界史の授業のなかにあったはずなのに、大人になったいま、その答えがすっぽりと抜け落ちていません…

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