(※写真はイメージです/PIXTA)

外資系企業の働き方は日本企業と大きく異なります。終身雇用や年功序列といった慣習はなく、実力・成果主義といっていいでしょう。それらがモチベーションにつながることもありますが、成果を上げられなければ解雇されることも……。本記事では、社会保険労務士法人エニシアFP代表の代表の三藤桂子氏が、Sさんの事例とともに、現役時代に高収入だった人が老後破産に陥ってしまうケースについて解説します。

憧れの職業の落とし穴

Sさんは、30代まではCAとして働いてきました。その後50歳になるまでは、ほかの企業からそれまでの企業よりもいい条件を提示されるたびに、転職を繰り返します。Sさんにとって転職の条件となるのは、もちろん賃金も重要ですが、それだけでなく、長くCAとして海外に行き続けられるかどうかを重視していました。

 

40歳ごろからは、管理職となり、後進の指導をしながらCAとしてフライトを続けていました。しかし、原因は不明ですが、次第に腰が痛む日が増えていきます。腰痛を患っていることが原因とははっきりしませんが、海外本社の都合により50歳で解雇。Sさんは愕然としました。まだ50歳という若さでセカンドライフへの突入を余儀なくされたのです。

 

これまでSさんは不規則な生活ということもあり、結婚には縁がなく独身です。老後のことはニュースで老後2,000万円問題を耳にして、独身の自分は1,500万円程度もあれば余裕で過ごせるだろうと、楽観的に考えていました。

 

Sさんが50歳で解雇された際、解雇に伴う補償を含め貯蓄額は2,000万円。単身者の老後資金としては余裕の金額かもしれませんが、Sさんの生活スタイルでは60歳で老後破産が確実です。

 

現役時代、Sさんが自宅にいたのは1年で1/2程度。もともと家事が苦手で、購入したワンルームマンションには片付けられていないブランド品などで溢れかえっていました。

 

Sさんは華やかな性格もあり、ブランド品が大好きで、フライトの度に時間ができると洋服、バック、靴、化粧品などを購入していました。

 

いずれは日本に帰ってくることを想定して都内に購入したワンルームマンションは、解雇された際、2,000万円あった貯金から、住宅ローンを繰り上げ返済すると手元には100万円程度しか残らなかったのです。

 

金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査] 令和4年調査結果によると、50歳代単身世帯の金融資産保有額の平均は1,775万円、金融資産を保有していない世帯を含む平均は1,067万円となっています。

 

現役世代の年収が1,000万円を超えていたにもかかわらず、平均にも到底およばない貯蓄額に加え、追い打ちをかけるような、老後の公的年金の見込額に驚愕します。

 

Sさんが65歳から受給できる公的年額を試算してみました。現在、解雇により無職。国民年金に加入しています。現状のまま65歳時の年金額は次のとおりです。

 

老齢基礎年金:79万5,000円(2023年度満額)×370ヵ月÷480月=61万2,812円

 

老齢厚生年金:50万円×5.481/1,000×250月=68万5,125円

 

合計129万7,937円(月10万8,161円)

 

Sさんは海外留学時に国民年金の任意加入をしなかったため、金額に反映されない期間があります。

 

「これでどう生きていけというの……」

老後破産にならないために

幸いSさんは50歳、これからの過ごし方で老後破産は回避できます。英語のスキルを活かし、再就職することで、老後の年金を増やすことができます。購入した高級マンションは住み続けるのかどうか、売却も視野に検討することも必要です。

 

外資系企業に限らず、成果主義により、評価されたことでの対価を自分のご褒美と使ってしまい、貯蓄ができていない人も多くいます。若いうちから、資産形成し、日常生活の見直しをします。その上で、嗜好品(趣味等含む)にかかる支出とのバランスを考えてはいかがでしょうか。

 

 

 

三藤 桂子

社会保険労務士法人エニシアFP

代表

 

 

 

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