(※写真はイメージです/PIXTA)

VTuberへの誹謗中傷は年々増加傾向にあるといいます。では、VTuberへの誹謗中傷であっても、法的措置をとることは可能なのでしょうか? 本記事では、VTuberへの誹謗中傷についてAuthense法律事務所の弁護士が解説します。

VTuberへの誹謗中傷が増加

VTuberとは「バーチャルYouTuber」の略称であり、自分の顔を出さずに2Dや3Dのアバターを使って活動しているYouTuberを指します。また、YouTubeに限らず、ほかの動画配信サービスで活動する配信者を含めてVTuberと呼ぶこともあります。

 

このVTuberに対して、誹謗中傷がなされる事例が増えています。顔を出していないVTuberへの誹謗中傷であっても、法的措置の対象となることを知っておきましょう。

VTuberへの誹謗中傷と法的措置

誹謗中傷への法的措置としては、「名誉毀損罪」などで刑事告訴をする方法と、民事で損害賠償請求をする方法の2つが考えられます。これらのうちいずれか一方のみの措置をとることも、双方の措置をとることも可能です。では、被害者が生身の人物ではなくVTuberである場合、法的措置についてはどのように考えればよいのでしょうか?

 

民事上の損害賠償責任は認められる可能性が高い

VTuberへの誹謗中傷に対して刑事上の罪に問うことは難しい場合がある一方、民事上の損害賠償請求は認められる場合があります。順を追って解説しましょう。

 

誹謗中傷への「損害賠償請求」とは?

損害賠償請求とは、誹謗中傷によって被った損害を、金銭で賠償するよう請求することを指します。まずは、相手に対して弁護士などを介して直接交渉することが多いでしょう。

 

相手が請求額どおりに支払ったり、多少減額をしてでも交渉がまとまったりすれば、これで解決となります。なお、このように裁判外で交渉がまとまることを、「示談」といいます。一方、交渉がまとまらなければ、裁判上での損害賠償請求を行う必要があります。

 

なお、インターネット上での誹謗中傷の場合、相手が匿名であり、誰であるのかわからないことも少なくありません。この場合には、損害賠償請求をする前に、相手を特定することが必要です。具体的には、裁判所へ申し立てを行い、裁判所からプロバイダなどに対して発信者情報開示命令を出してもらうことが多いでしょう。

 

VTuberへの誹謗中傷でも損害賠償請求は可能な場合が多い

刑事上の責任を問うための要件と、民事上の損害賠償請求が認められるための要件は、イコールではありません。たとえば、誹謗中傷によって社会的信用が低下したとまではいえない場合であっても、本人の自尊心やプライド(「名誉感情」などといいます)が傷付いたのであれば、損害賠償請求が認められる傾向にあります。

 

演者であるいわゆる「中の人」が知られていないVTuberへの誹謗中傷は、中の人の社会的信用を直ちに低下させることにはなりません。しかし、VTuberへの誹謗中傷によって中の人の名誉感情が傷付いたと判断されれば、損害賠償請求は認められる可能性があるということです。実際、VTuberへの誹謗中傷被害について、加害者とのあいだで損害賠償金120万円の支払いを伴う示談が2023年に成立しています

 

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