コンテンツ作りはターゲットから逆算で
病院コンテンツの話に移ります。ここはやはり画面の先にいる生身の人間をいかに意識するかでしょう。
患者さんは「私の命を預ける人」をWebサイトで探しているわけですから、病院コンテンツで肝になるのは「医療人としての“熱”が伝わるか否か」ということに尽きます。
では、カメラ目線で腕組みした医師の写真を載せたらいいのかというと、それだけでは心に刺さらず、ミスコミュニケーションに終わってしまいます。それよりもたとえば乳腺エコー検査を真剣な眼差しで行う現場の女性技師の後ろ姿(「病変を絶対見つけるぞ」という医療人としての想い)の写真のほうがよいでしょう。
実際に患者を気遣うような真摯な姿勢が伝わる写真とともに、検診結果が異常だった患者さんへのアドバイスを掲載したコンテンツを制作した事例があるのですが、これには臨床現場での反響がありました。その医師に「〇〇先生のホームページ記事を見ました」と言って患者さんがやってくるようになったのです。
診療実績に自信がある病院であれば、症例数などのデータはアピールしたい気持ちになりますが、「より腕のよい執刀医」を探しているセカンドオピニオン受診を別にすれば、多くの患者はさほど気にしていないようです。紹介元の医師についても、紹介する先の診療実績はあくまで参考情報(少なすぎなければOK)であり、症例数イコール紹介の優先度にはなりません。
広報コンテンツに大切なことは、画面(もしくは紙面)の先にいる生身の人間の心に、どのような印象、影響を与えたいかということです。相手が開業医であれば「ここに紹介したい」と思わせるコンテンツですし、求職者に「ここで働きたい」と思わせるコンテンツというものを逆算して作っていくことになります。
そのときに効果的なのが「現場からの生の声」を織り込んで、自院の「医療人の姿」をしっかり伝えていくことです。たとえば院内からの「手上げ方式」でかかわる方を募っていくと、生の現場を伝えるよいコンテンツができてくるのではないでしょうか。
高親和性ユーザーを照準に定める
続いて「広報成果の答え合わせ」、つまり広報に取り組んだ方の努力は実ったのかを確認する効果測定の話をしたいと思います。ここで筆者が拠って立つ考え方が「エビデンスに基づく広報」(EBPR:Evidence Based Public Relations)というものです。
どこに労力、予算をかけて、どの程度の広報効果を得られたのかを可視化し、広報活動の意義と成果と正しく向き合うための考え方の部分といってもよいでしょう。
一例を挙げます。たとえば「病院Webサイトのページビュー数が毎月4~5万から20万を超えるようになった!」といったことがあれば、院内では大いに注目されることになりますが、それが本当に病院側の期待する集患や採用活動につながったのかまで観察していく必要があります。
一見、ユーザー数が増えたようにみても、[図表6]におけるすそ野が広がっただけで、高い親和性を持つユーザーが獲得できていない場合もあるのです。
たとえば、「外来のご案内」の閲覧数と実際の外来患者数の相関性、「募集要項」の閲覧ユーザー数とWeb応募者数の相関性などを数値でみるなど、事実に基づいた分析を行いながら、病院広報を通じて実際の行動が期待できる高親和性ユーザーをどれだけ獲得できたのかを分析していくのをみることができます。
こうしたEBPRからみて適切な指標を通じて、答え合わせを進めていき、「広報努力が成果に報われる」手応えが院内広報チームのモチベーションを上げていくようになると、自然と病院広報の良循環が回りはじめ、「指示されなくても職員が積極的に広報に取り組む」理想的な病院広報体制となります。
《最新のDX動向・人気記事・セミナー情報をお届け!》
≫≫≫DXナビ メルマガ登録はこちら