「誰がお金を管理していたか」は必ずチェック
国税職員は、「家計を誰が管理していたか?」という点に注目します。なぜなら、これが相続税調査を左右するからです。
家計の管理者を聞く裏には、「脱税行為をすることができたのは誰なのか?」という意図が隠されています。
たとえば、相続税調査の過程で、「亡くなる3か月前に1,000万円の預金が引き出されて、相続税の申告財産から除かれていた」という事実を把握したとしましょう。これを相続税逃れのために行ったのであれば、明らかな脱税行為です。この場合、「重加算税」といって、もっとも重たいペナルティが課されることになります。
ちなみに税率は過少に申告していた場合は35%、申告をしていなかった場合は40%と高くなっています。でも、亡くなった人が預金を引き出していて、相続人は一切知らなかったならどうでしょうか? この場合は脱税というよりも、過失による申告漏れですから、ペナルティが軽くなります。
こうした判断をするうえで、冒頭の「家計を誰が管理していたのか」という点が重要になってくるのです。
必ず聞く必要はあるものの…“いちばん抵抗を感じた”質問「意識はいつまであった?」
同じ意味で、「亡くなった人の意識がいつまであったのか」という点も、相続税調査で聞かれることの多い質問です。
ところがこの質問は、私が税務職員の頃にいちばん抵抗を感じたものです。亡くなる直前の様子というのは、家族にとって思い返したいことではないでしょうし、赤の他人に踏み込まれたくないことだと思ったからです。でも、きちんと調査をするには、この質問も避けては通れません。
たとえば、亡くなる10日前に意識を失っていたのに、預金が亡くなる3日前に引き出されていたとします。こうなると、亡くなった人がお金を動かしたとは考えられません。そして、家族の誰かが財産を隠したのではないか、という仮説が立ちます。
「家計は妻が管理していた」「夫は亡くなる10日前から意識がなかった」と説明をしたにもかかわらず、後から「その出金は夫が勝手にしたもの」といい逃れをしても通じません。