家族と「お金の情報をシェア」して過度な出費を防ぐ
富裕層の家庭を見ていると、お金を稼いでいる人がみなお金に執着しているかというと、そうではないことがわかります。むしろ、本人はお金に無頓着で、家族がしっかり管理しているという傾向があるのです。
私が相続税調査をした家庭は、夫が働き、妻が家庭を守るのが一般的な世代でした。このような場合、夫は「お金を稼ぐ人」、妻は「お金を守る人」という役割分担ができています。
そういう家庭には妻という“お金の管理者”がいるので、「お金を稼いだ夫が亡くなった」という状況であるにもかかわらず、相続税調査をすれば必要な情報のほとんどが集まります。
私が携わったケースでは、妻だけでなく、同居の子が家計を管理していることも多かったです。ですから、通帳を見て「この出金は、なにに使ったのですか?」といった質問をすると、ある程度確かな答えを得ることができました。
老人ホーム検索サイト「みんなの介護」によるアンケート調査によると、自分でお金を管理している高齢者は24.7%に過ぎません。やはり多くの家庭では配偶者や子どもが家計の管理をしているようです。
家計の管理を家族に任せることは、2つの意味で合理的です。
まずは、第三者の目が入ることで無駄遣いが減ります。イギリスの政治学者パーキンソンが唱えた「パーキンソンの法則」では、「支出は収入の額に達するまで膨張する」ことが示されています。つまり、人はお金があると思うと、そのお金を使い切ってしまう傾向があるということです。
そのため、家族にお金の管理を任せることが、過度な消費を防ぐことにつながります。私が以前インタビューをした資産管理アドバイザーの方も、「お小遣い制にしたほうが、結果的に家庭のお金が残りやすい」と教えてくれました。