2023年の日本は“もっとも明るい数量景気”に
2023年の日本経済はバブル崩壊後、もっとも明るい数量景気の年となるだろう。Jカーブ効果により円安初期の価格面でのマイナス場面が終わり、数量増の乗数効果が表れる時期に入っている。
円安で日本の価格競争力が強まり、工場の稼働率が高まる。また割高になった輸入品の国内生産代替が起きる。日銀短観、日経新聞など各種の設備投資調査では、すでに2022年に続き2023年においても設備投資が過去最高水準の伸びとなる。
円安はまた、インバウンドを増加させ、外国人観光客が日本の津々浦々の地方内需を刺激している。安いニッポンに向かって、さまざまなチャンネルを通じて世界の需要が集中し、国内景気を活性化し始めている。
そもそも日本のデフレは、円高で競争力を失った企業が賃金抑制に走ったことから始まった。しかしいま、労働需給はひっ迫し、企業は国内生産体制の構築のために高い賃金を払ってでもいい人を採用し、競争力のあるチームを作らなければならなくなった。
連合によると2023年の平均賃上げ率は3.67%と30年ぶりの高さとなった。それを担保するものが企業における価値創造である。法人企業統計による企業業績は4~6月11%増、経常利益率は8.9%と史上最高である[図表2]。
3~6月にみられた“パニック的日本株買い”が周期的に起きる
このファンダメンタルズの大好転に加えて、株式需給が大きく改善していく。異常に現預金選好が高かった日本の家計が、NISA改革を契機に株式投資に大きくシフトしていく。
金融庁、東証の誘導により企業は株主への利益還元を強め自社株買いが急増している。日本株を著しくアンダーウェイトしてきた外国人投資家は、日本株の比率を大きく引き上げることを迫られている。
過去30年間、世界株式(MSCIACインデックス)に占める日本株式の比率は、40%強から今日の5%まで、ほぼ10分の1まで低下してきた。日本株投資は売り一辺倒、アンダーウェイトに徹してきた時代が30年間も続き、日本を軽視する風潮が完全に根付いてしまっている。
30年間の振り子が逆転し、ここから日本株のウェイトを高めざるを得なくなるのはほぼ確実であるが、ほとんどの投資家はその準備ができていない。今年3~6月にみられたパニック的日本株買いが、周期的にこれでもかというほどやってくる時代に入ったことを、肝に銘ずるべきである。
心配された日銀のYCC等非常事態政策の正常化も、市場に悪影響を与えずに遂行できることが見えてきた。まさにすべての投資主体にとって、日本株の持たざるリスクを思い知らせる、秋の陣が始まったといえる。
武者 陵司
株式会社武者リサーチ
代表
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