(※写真はイメージです/PIXTA)

2023年、多くのエコノミストが「バブル化した米国株の暴落は不可避」「中国経済正常化に期待」と見込んでいました。しかし実際には「米国繁栄・中国衰弱」という二極化が始まっていると、株式会社武者リサーチ代表の武者陵司氏はいいます。いったいなにが起こっているのでしょうか。米中経済のいまと、今後の展開についてみていきましょう。

リセッションの気配なし…米経済の“驚くべき強さ”

米国経済の驚くべき強さは特筆に値する。40年間で最大の引き締めにもかかわらず、リセッションの気配がまったくない。IMFによる米国経済の2023年見通しは2022年7月時点で1.0%であったが、その後3ヵ月ごとの改定の度に上方修正され、2023年7月時点では、1.8%に引き上げられた([図表1]参照)。

 

[図表1]IMF世界経済見通しの変遷
[図表1]IMF世界経済見通しの変遷

 

しかし実際は、2023年1Qは2.0%、2Qは2.4%と事前予想を上回る結果であり、アトランタ連銀の経済予測モデル”GDP Now”による3Q予想は5.0%と一段の加速を見込む。最大の牽引車はGDPの7割を占める好調な消費である。消費者心理が改善し小売売上など消費需要が強まっている。

 

消費好調の背景にある「堅調な雇用」

消費好調の背景にはコロナ禍時代に積み上がった貯蓄の取り崩し、政府の社会保険支出増などもあるが、もっとも大きな要因は、雇用が堅調で家計の賃金収入が増加し続けていることである([図表2]参照)。

 

[図表2]米国家計収支月次動向(2019年平均比増減)
[図表2]米国家計収支月次動向(2019年平均比増減)

 

雇用は過去の利上げ局面である2000年ITバブル崩壊時や、2008年のリーマンショック時とは大きく異なり、情報を除く全産業で力強く増加している[図表3]。

 

[図表3]米国セクター別雇用者推移
[図表3]米国セクター別雇用者推移

 

「消費増⇔雇用増」の好循環を支える企業収益、財政需要

かつてない「消費増⇔雇用増」の好循環が成立しているようである。それを支えているものが、堅調な企業収益、抑制されている労働分配率[図表4]、増加が続く企業部門のフリーキャッシュフロー[図表5]である。政府による社会保険支援増額、さらに、Chips法、IRA(インフレ抑制法)による産業支援など財政需要増加も寄与している[図表6、7]。

 

[図表4]米国労働分配率と景気推移
[図表4]米国労働分配率と景気推移

 

[図表5]米国企業資金余剰(フリーキャッシュフロー)推移/[図表6]米国財政赤字とFRBによる国債保有の拡大
[図表5]米国企業資金余剰(フリーキャッシュフロー)推移/[図表6]米国財政赤字とFRBによる国債保有の拡大

 

[図表7]米国製造業建設投資(実質)の推移
[図表7]米国製造業建設投資(実質)の推移

 

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※本記事は、武者リサーチが2023年8月21日に公開したレポートを転載したものです。
※本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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