日本のバブルよりも大きい中国の「不動産バブル」
中国バブルが日本以上に深刻な現実(FACTS)を4点にわたって検証する。
まず第一に、中国において、近年世界が経験したことがない不動産価格の異常な値上がりが起きたことが指摘される。不動産価格の水準を年間所得との比較で見ると、上海50倍、深圳43倍、香港42倍、広州37倍、北京36倍(2023年NUMBEO調べ)と、歴史的高水準に達している(東京は12倍、NY10倍)。バブル期の東京の同倍率が15倍であったことと比較すると、中国の深刻度は明らかである(図表1)。
また住宅価格を年間家賃との比較で見ても東京やNYの25倍に対して、中国は全国中央値でも58倍(2023年中国不動産協会調べ)と著しく高い。住宅所有が結婚の条件という中国で、若年失業率が20%超の環境下で、この価格は異常である。結婚できない若者が続出し社会的不安が高まり、政権はそれを無視できなくなった。
「住宅は住むためのものであり、投機の対象ではない」という習主席の言葉は、1990年頃の日本と同様に、イデオロギーというより、国民の強い不満に対する対応と理解するべきであろう。
では、不動産バブルのマクロ的規模はどれほどか。日本の土地時価総額は、1980年(745兆円)、1990年(2,477兆円)、2005年(1,252兆円)、2013年(1,135兆円)、2021年(1,276兆円)と推移してきた。ピーク時1990年の対GDP比は581%であった(図表3)。
これに対し、2017年の中国の住宅時価総額は430兆元(Kenneth Rogoff, Yuanchen Yang (2020), "Peak China Housing")という試算がある。GDP 79兆元として計算すれば、対GDP比は544%と、ほぼ日本のバブル時に匹敵することがわかる。
ちなみにFRBによる米国の住宅時価総額(家計保有)はバブルピーク2007年でも26兆ドル(対GDP比180%)、2011年20兆ドル(対GDP比129%)、2022年45兆ドル(対GDP比177%)となっており(図表4)、日本と中国のバブルはやはり桁外れに大きかったことがわかる。