かつては中国人に大人気だったが…揺らぐ「中国市場」の海外ブランドシェア。欧米諸国はじめ韓国も難航する、その原因

かつては中国人に大人気だったが…揺らぐ「中国市場」の海外ブランドシェア。欧米諸国はじめ韓国も難航する、その原因
(※写真はイメージです/PIXTA)

中国ではかつて、「外資系ブランド」というだけで消費者に安易に受け入れられる時代がありました。しかし近年、欧米ブランドをはじめとし、韓国製品などの存在感は薄らいでいます。本記事では、株式会社伊藤忠総研・主任研究員の趙瑋琳氏の著書『2030年中国ビジネスの未来地図』より、中国国内における外資系ブランドの衰退について解説します。

韓国製品の存在感が薄れる4つの理由

近年、中国市場における韓国製品の存在感が薄れています。

 

韓国製品と言えば、かつてはヒョンデやキアの自動車、サムスンやLGの電子機器、「イニスフリー(Innisfree)」や「雪花秀(ソルファス/Sulwhasoo)」をはじめとする化粧品が、特に高い人気を集めていました。しかし、中国における韓国車のシェアは2016年の7.4%(179万台)から2021年の2.7%(54万台)にまで低下しています。

 

2021年も世界のスマートフォン出荷台数で首位の座を獲得したサムスンですが、中国では状況が異なります。サムスンはかつて中国市場でハイエンドな高級スマートフォンの代名詞でしたが、その市場シェアは2012年の17.4%がピークで、2021年には0.6%にまで下落しています。また、2022年11月の「独身の日」キャンペーンにおけるカテゴリー別売上高ランキングを見ると、韓国勢の化粧品はランクインしていません。

 

では、中国で韓国製品の存在感が低下した要因はどこにあるのでしょうか。考えられる要因は4つあります。

 

1.中韓関係に揺らぎ

1つ目は政治問題で中韓関係に揺らぎが生じたことによる影響です。2016年に在韓米軍へのTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)の配備問題が発生し、中国では韓国旅行や韓国製品へのボイコットが行われました。ボイコット自体は長引かなかったのですが、韓国政府への不信感が韓国製品への不買につながったと見られます。

 

2.韓流ブームの衰退

2つ目には韓流ブームの衰退があります。過去の韓流ブームでは、韓流スターが人気を集めるとともに、韓国製品を買い求めるトレンドがありましたが、昨今では、韓国ドラマは時々放送されるものの、過去ほどの求心力はありません。また、口コミサイトや動画配信サービスでの発信と露出は意識されていないようで、韓国勢は中国消費者向けの重要な宣伝手段を使いこなせていません。

 

3.製品のポジショニング戦略

3つ目は、製品のポジショニング戦略にかかわる要因です。以前からある課題ですが、どんな消費者をターゲットにどんな製品を提供するかが明確になっていないのです。

 

中国では欧米や日本の製品に対しては「高品質+高価格」のイメージが定着しています。それに対して、韓国製品は「一応海外製+比較的コスパが良い」というイメージで、欧米・日本製品の代替的な存在であったのですが、中国人消費者の購買力の向上に伴って、あってもなくても気にしない存在に変わりました。

 

4.中国国産ブランドの台頭

4つ目は、中国国産ブランドの台頭です。これまで述べたように、自動車も電子機器も電化製品も化粧品も、それらを製造する中国企業が着実に力をつけてきています。ブランド力の育成にも力を注ぎ、中国製品の「安かろう、悪かろう」のイメージからの脱皮を図ろうとしています。中国企業の台頭によって、欧米・日本製品と中国製品に挟まれる韓国製品の“生存空間”はさらに縮小しているのです。

 

 

趙 瑋琳

株式会社伊藤忠総研 産業調査センター

主任研究員

 

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2030年中国ビジネスの未来地図

2030年中国ビジネスの未来地図

趙 瑋琳

東洋経済新報社

気鋭の研究者が中国の「新消費」・「新ブランド」・「新市場」を徹底解説! 日本人がまだ知らない一歩先の中国ビジネスとは? 「世界の工場」から「世界の市場」へと変貌した中国ですが、「常に変化し、唯一、変化していない…

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