結婚や子育てより「自己中心」…一人っ子政策下で生まれた「中国のZ世代」のいま【伊藤忠総研・主任研究員が解説】

結婚や子育てより「自己中心」…一人っ子政策下で生まれた「中国のZ世代」のいま【伊藤忠総研・主任研究員が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

かつては出産制限をかけるのに懸命であった中国ですが、現在では「一人っ子政策」緩和後も出生率が伸び悩み、自国の大きな課題となっています。本記事では、株式会社伊藤忠総研・主任研究員の趙瑋琳氏の著書『2030年中国ビジネスの未来地図』より、一人っ子政策下で生まれ、今後、中国の消費活動の中心を担うZ世代の実態について解説します。

デジタル世代とその消費行動の特徴

SNS映えのする購入体験やライブコマースなど、新しい消費形態が広がるなか、現在、中国における消費の主力層は1980年代以降に生まれたデジタル世代となり、若年化が進んでいます。なかでも新たな消費の主人公として期待されているのはZ世代です。

 

デジタル世代とひとくちに言っても、その範囲は比較的広く、世代の幅は40年以上もあります。そのため中国ではデジタル世代という表現でまとめながら、独自の区切り方によって、1980年代に生まれた人を「80後」、1990年代に生まれた人を「90後」、2000年代に生まれた人を「00後」、2010年代に生まれた人を「10後」と呼んでいます。つまり10年ごとに世代交代が進むとの考えです(図表2)。

 

[図表2]中国におけるデジタル世代とその特徴

 

欧米では1980年から1990年代半ばまでに生まれ、2000年以降に社会に出た世代を「ミレニアル世代」、あるいは「Y世代」と定義しています。中国の「80後」と「90後」の一部に当たりますが、学生時代にパソコンやインターネット普及の波があったため、社会人になってから仕事でもプライベートでもデジタル化にスムーズに順応し、デジタルマインドが高いです。

 

そして、ミレニアル世代に続き、主に1995年から2009年の間に生まれた世代が「Z世代」です。幼い頃からスマートフォンやインターネットに触れ、様々なデジタルサービスの普及とともに成長してきた世代です。デジタル世界に親しんでいるため、デジタルネイティブとも呼ばれています。

 

中国国家統計局のデータによれば、中国のZ世代は2億6252万人で、男性の割合が高く54.2%を占めています。一人っ子として中国の高度経済成長期に生まれ育ったため、経済的にも精神的にも比較的豊かで、前向きな消費価値観を持っています。

 

2000年に生まれた人はその多くが2022年に社会人としてデビューしており、今後、Z世代による消費がさらに拡大し、2030年代には完全に消費の主役になるでしょう。図表2でデジタル世代全体の特徴と消費行動を示していますが、これらの特徴は特にZ世代によく見られるものだと言えます。デジタル使用は日常の一部になり、情報収集にも発信にもコミュニケーションにも、インターネットやSNSを活用しています。

 

中国のモバイルインターネットに関するデータ情報を提供するQuestMobile社の調査によると、2022年6月のZ世代のネット利用時間は月平均159.4時間、一日平均7.2時間で、どちらも全ネットユーザーの平均より長くなっています。同データではZ世代のオンライン消費意欲が最も高く、中でもオンライン購買力が2000元以上のユーザー割合は30.8%となり、前年同期比2.7%増だったと報告されています。

 

また、生き方や価値観に対する柔軟な考えを持ち、多様性を素直に受け入れられるのもZ世代です。例えば環境問題や社会課題へ高い関心を持ち、サステナビリティを意識した消費生活を送っています。消費を他人との違いを表す行動と捉え、自分らしさをアピールできるような商品を選ぶ傾向も強いです。

 

 

趙 瑋琳

株式会社伊藤忠総研 産業調査センター

主任研究員

 

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2030年中国ビジネスの未来地図

2030年中国ビジネスの未来地図

趙 瑋琳

東洋経済新報社

気鋭の研究者が中国の「新消費」・「新ブランド」・「新市場」を徹底解説! 日本人がまだ知らない一歩先の中国ビジネスとは? 「世界の工場」から「世界の市場」へと変貌した中国ですが、「常に変化し、唯一、変化していない…

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