(※写真はイメージです/PIXTA)

日本企業の従業員は労働基準法などさまざまな法に守られており、めったなことでは解雇されません。また通常、解雇されるときは事前に「解雇予告」を受けます。しかし、そんな日本であっても「解雇の際、予告が不要な場合がある」と、Authense法律事務所の西尾公伸弁護士はいいます。それは具体的にどのようなケースか、詳しく見ていきましょう。

解雇予告→解雇まで「1ヵ月未満」の場合は手当が必要

解雇予告をする際に、解雇予告手当の支払いが必要となるケースがあります。

 

先ほど紹介した解雇予告が不要とされるケースを除き、解雇予告は解雇日の30日前までに行わなければなりません。しかし、事情によっては、それほど前もって解雇予告ができない場合もあるでしょう。

 

解雇予告日から解雇日までの期間が30日に満たない場合には、解雇予告手当の支払いが必要となります。

 

解雇予告手当の計算方法

解雇予告手当は、どのように計算すればよいのでしょうか? 基本の計算式は、次のとおりです。

 

解雇予告手当の額=平均賃金×30日

 

たとえば、1日あたりの平均賃金が1万2,000円である従業員を即日解雇した場合の解雇予告手当の額は、次のとおりです。

 

12,000円×30日=360,000円

 

ただし、即日解雇ではないものの、解雇予告日から解雇日までの日数が30日に満たない場合には、次の式で算定します。

 

解雇予告手当の額=平均賃金×(30日-解雇予告日から解雇日までの日数)

 

たとえば、1日あたりの平均賃金が1万2,000円である従業員を解雇日の10日前に解雇予告をした場合の解雇予告手当の額は、次のようになります。

 

12,000円×(30日-10日)=240,000円

 

原則として1日あたり平均賃金の30日分に相当する額の支払いが必要となり、30日に満たないものの即時解雇ではない場合には、30日に満たない日数分の平均賃金の支払いが必要になるということです。

 

「平均賃金」ってどうやって算定するの?

解雇予告手当の計算に使用する「平均賃金」は、どのように算定すればよいのでしょうか※2

 

平均賃金とは、算定すべき事由の発生した日以前3ヵ月間にその労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(出勤日数ではありません)で除した金額を指します(労働基準法12条1項)。

 

賃金の総額は、時間外労働割増賃金や各種手当を含む賃金のすべてが含まれ、臨時に支払われた賃金や手当、3ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)は含まれません。

 

たとえば、算定すべき事由の発生以前3ヵ月の歴日数(その企業における給与計算対象期間)が次のとおりであるとします。

 

・4月分(3月21日~4月20日):31日

・5月分(4月21日~5月20日):30日

・6月分(5月21日~6月20日):31日

 

また、対象の従業員の月給は250,000円であり、別途通勤手当として月に10,000円(月給と合計すると260,000円)が支給されているものとしましょう。

 

この場合における1日あたりの平均賃金は、次のように計算します。

 

1.この期間の賃金総額:260,000円+260,000円+260,000円=780,000円

2.この期間の歴日数:30日+31日+31日=92日

3.1日あたりの平均賃金:780,000円÷92日=8,478.260・・・→(銭未満を切捨)8,478.26円

 

月給制である場合には、この平均賃金を用いて解雇予告手当を計算します。

 

日給制、時間給制等の場合には、最低保障額があり、計算式は次のとおりです(労働基準法12条1項1号)。

 

・最低保障額=算定期間中に支払われた賃金総額÷算定期間中に実際に労働した日数×60%

 

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※本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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