(※写真はイメージです/PIXTA)

日本企業の従業員は労働基準法などさまざまな法に守られており、めったなことでは解雇されません。また通常、解雇されるときは事前に「解雇予告」を受けます。しかし、そんな日本であっても「解雇の際、予告が不要な場合がある」と、Authense法律事務所の西尾公伸弁護士はいいます。それは具体的にどのようなケースか、詳しく見ていきましょう。

解雇予告をせずに解雇した場合の「ペナルティ」

解雇予告が必要なケースであるにもかかわらず、30日前までに解雇予告をせず、かつ解雇予告手当も支払うことなく従業員を解雇したら、どうなるのでしょうか? この場合に対象となり得るペナルティは次のとおりです。

 

「付加金」が請求される可能性がある

解雇予告手当の支払いが必要であるにもかかわらず支払わなかった場合には、本来支払うべきであった解雇予告手当に加えて、付加金を支払うよう裁判所から命じられる可能性があります(労働基準法114条)。

 

付加金の額は、本来支払うべきであった解雇予告手当の額と同一です。つまり、本来支払うべきであった解雇予告手当の額の倍額を、従業員に対して支払う必要が生じる可能性があるということです。

 

罰則の対象となる可能性がある

解雇予告の規定に違反をした場合には、労働基準法の規定により罰則の対象となります(労働基準法119条)。この場合の罰則は、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金です。

「解雇予告通知」をする際の4つのポイント

従業員にとって、解雇は明日からの生活の糧を失う可能性のある非常に重要な事態です。そのため、状況によっては、解雇の無効などが争われるかもしれません。この点を踏まえて、解雇予告通知をする際には、次の点に注意しましょう。

 

1.あらかじめ弁護士へ相談する

日本の法令では、従業員の権利が非常に強く守られており、合理的な理由なく解雇をするようなことはできません。

 

また、たとえ従業員に非があり就業規則に懲戒解雇ができると記載してある場合であっても、その非の程度が小さければ、不当解雇であり無効と判断される可能性もあるでしょう。

 

そして、解雇日の30日前までに解雇予告通知をしたり、解雇予告手当を支払ったりしたからといって、その解雇が当然に有効となるわけではありません。労働基準法の規定どおりに解雇予告をしたとしても、従業員が解雇の無効を主張して訴訟を提起する可能性もあるでしょう。

 

そのため、解雇予告をするにあたっては、あらかじめ労使問題にくわしい弁護士にご相談ください。

 

弁護士に相談しておくことで、解雇の有効性についてあらかじめ見通しを立てることができるほか、万が一訴訟となった場合に備えた証拠の収集や保全などについてのアドバイスを受けることが可能となります。

 

また、状況によっては従業員との面談に同席してもらうことができるほか、仮に訴訟を提起されたとしても落ち着いて対応することが可能となるでしょう。

 

2.解雇理由を明確にする

解雇予告をするにあたっては、解雇理由を明確にしたうえで、解雇予告通知書に記載しましょう。理由もわからないままに解雇されてしまっては、従業員側の納得感が得られず、解雇無効を主張される可能性が高いためです。

 

また、先ほども解説したように、解雇をするためには法令や就業規則の根拠が必要とされます。そのため、解雇理由と併せて、根拠となる就業規則の条文なども記載しておくとよいでしょう。

 

なお、解雇予告時に解雇理由を告げなかったとしても、従業員側から解雇理由などについての証明書が請求された場合には、使用者である会社などは遅滞なくこれを交付しなければならないとされています(労働基準法22条)。

 

そのため、証明書の交付請求などの手間を減らすという観点からも、解雇予告通知書に解雇理由を記載しておいた方がスムーズです。

 

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※本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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