「値付け」でより魅力的にする方法
値決めは経営。これは京セラや第二電電(現KDDI)などを創業、日本航空(JAL)を再建し、経営塾「盛和塾」の塾長として国内外の経営者育成に心血を注いだ、稲盛和夫氏の言葉です。私自身も、稲盛氏の影響を大きく受けています。
ビジネスは、値決めによって大きく変わります。適切に価格設定をすれば、顧客にとってその商品・サービスがより魅力的に感じられるようになります。値決めに対して、押さえるべき点は2つです。
1つ目は、「利益と販売数をかけ合わせた数字」が最大値になるようにします。2つ目は、「お客様に喜んでいただける最高な値段」にする必要があります。この2つの点を抑えると、「高単価」で「高利益率」な値付けになるでしょう。
では、どうすればよいのでしょうか。何を目的とするかという「価格戦略」と、どのように価格を設定するかという「価格設定方法」に分けて考えることをおすすめします。起業初期段階で取り入れやすい、「価格戦略」3つと「価格設定方法」3つをお伝えします。あなたのサービスに一番合う方法で魅力的な値段をつけてください。
◆起業初期段階でおすすめの3つの価格戦略(何を目的とするか)
【価格戦略1. スキミングプライシング戦略】
「利益を上げること」を目的とした価格戦略です。あらかじめ高価格に設定して市場に投入し、利益をしっかりと得ていく戦略です。身近な例を2つあげます。
1つ目は「iPhone」です。iPhoneは毎年新機種を発売し、2007年から新規販売価格を上げて高価格で市場に投入しています。
2つ目はおむつの「パンパース」です。パンパースは、高価格なプレミアムな紙おむつとして成功しています。低価格帯のおむつも展開していましたが、今は販売を終了して、高価格帯のパンパースに注力しています。
【価格戦略2. プライスカスタマイゼーション戦略】
「利益の最大化」が目的です。同じ商品サービスでも、提供する場所や顧客層に合わせて、価格を細かく変えていく戦略です。身近な例としては、たとえば、高級ホテルで売られているビールやマッサージなどがこれにあたります。
他にも、大人料金と子供料金を用意する、事前購入や大量購入の場合には割引をして、結果的に売上と利益を最大化させる、などがあります。
【価格戦略3. プリペイド型価格戦略】
「利益獲得の効率化」が目的です。あらかじめ前払いしてもらうことで、さまざまなマネジメントへ投資できるようにする価格戦略です。身近な例を2つあげます。
1つ目は「アマギフ」(Amazonギフト券)です。支払いのタイミングを早めにずらせるため、ギフトやプレゼントなどにも活用できます。
2つ目は「互助会」です。毎月積み立てをしてもらうことで、冠婚葬祭時にお得に商品サービスを購入できるようにするものです。これもプリペイド型の典型的な例でしょう。
◆起業初期段階でおすすめの3つの価格設定手法(どのように価格を設定するか)
【価格設定手法1. コストプラス価格設定】
あらかじめかかる経費を算出し、「必要な利益」を上乗せする価格設定手法です。「経費」に「得たい利益」を加えるだけなので、シンプルで起業初期では使いやすい価格設定手法です。
たとえば、飲食店などで仕入れの材料費が上がるとメニューの金額が上がるのは、この価格設定方法を使っているからです。
【価格設定手法2. 名声価格設定】
「高かろう、よかろう」といった「知覚する品質」を利用した価格設定手法です。
たとえば、ヴィトンの革職人がヴィトンを卒業して、同じスキルで同じバックを作ってもヴィトンの方がよいと思う人が多いのは、この「知覚する品質」が働いているためです。
【価格設定手法3. 段階価格設定】
「松・竹・梅」で利益を最大化する価格設定です。たとえば、ドリンクのSMLはM>S>Lの順番で売れます。1つだけではなく、3つ用意することで利益を最大化させます。
以上、起業初期段階でおすすめの「価格戦略」と「価格設定手法」を3つずつご紹介しました。プライシング戦略は奥が深いですが、起業初期段階では「価格戦略」3つと、「価格設定手法」3つの中から選ぶとよいでしょう。ご自身のサービスに合った戦略と手法を取り入れてください。
草間 淳哉
ブランディングカンパニー(株)ウェブエイト代表
代表