前回は、前妻や愛人との間に子がいる場合の遺産相続事例を見てきました。今回は、相続財産の分配を「生前にシミュレーション」すべき理由について説明します。

非課税枠を活用するには「作戦」が不可欠

具体策4 財産をリストアップして「分割案」をつくってみましょう

家族構成図ができたら、次はご主人様と一緒に財産の棚卸をし、分割案を考えてみましょう。ご主人様の財産を一覧表に書き出していきます。

 

現預金、不動産、動産、借金など、現時点で院長がおもちになっている財産の品目を書いてきます。そして、品目の横にそれぞれの金額を書き加えます。図表1を参考にしていただくとわかりやすいと思います。

 

開業医の相続では、後継の子の相続税の負担が重くなりがちです。そういう場合、非課税になる現金を、なるべく多く後継の子に渡してあげられると、後継の子はとても助かります。考えなしに非課税枠をただ使っています、とするだけではなく、知恵を使い、どのようにその非課税枠を使ったら、ご自分の家族にとって有効か、作戦を立てるのです。

 

たとえば、二次相続も対策が必要な奥様は、すでにたくさんの非課税枠がありますから、生命保険の受け取りも、退職金の受け取りも、ご自分がすべて受け取ってしまっては、もったいないです。相続人が三人いるとしたら、3000万円の現金を、税金ゼロで、後継の子に渡すことさえできるのです。

 

ここは、奥様の腕の見せどころなのですが、年齢を重ね、奥様の気持ちが変わり、やっぱりご自分の老後生活費にしたいと、受け取りを変えてしまう方もいらっしゃいます。まあ、それも仕方ありません。奥様の幸せが、何にも増して最優先です。

 

【図表1 相続財産の一覧表】

財産の「見える化」で相続を具体的に考える

資産のリストアップができたら次に、それぞれの財産を誰に渡すかを考えていきます。一覧表のままではイメージが湧きにくいので、財産をイラストにして「見える化」すると考えやすくなると思います。

 

「自宅は誰々に渡そう」「こっちの不動産はあの子かな?」「クリニックは跡継ぎの子だから、そうすると、こっちの財産は別の子にしないと」「この財産は半分に分けて、あの子とこの子に」など、いろいろなパターンをシミュレーションしてみてください。漠然としていた相続が少しずつ具体的に見えてきませんか。

 

【図表2 遺産分割のシミュレーションのイラスト】

本連載は、2016年8月27日刊行の書籍『開業医の相続対策は「奥様」がやりましょう』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

開業医の相続対策は 「奥様」がやりましょう

開業医の相続対策は 「奥様」がやりましょう

芹澤 貴美子

幻冬舎メディアコンサルティング

開業医は、今、目の前にいる患者さんの命と健康を預かる、専門的な職業です。新しい医療技術のこと、新薬のことなど、たくさんの情報を常に仕入れていなくては務まりません。なかなかお金の知識を得るための時間はないのが現実…

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