愛人の子であっても「認知した子」には相続権がある
〈ケース2〉夫に離婚歴があり、前妻との間に子がいる場合
現在のご夫婦に子どもがいなくとも、前妻がおり、子どもも1人いました。この場合、その子には夫の財産の2分の1の権利があります。
考えられるリスクとしては、現金はともかく、妻が今住んでいる自宅まで2分の1を子に請求される恐れがあることです。自宅以外の財産(たとえば他にも自宅と同等の価値の別荘があるなど)を渡すことで埋め合わせられればいいのですが、そうでない場合は最悪、妻は自宅を売却して2分の1を子に渡さなくてはなりません。奥様は80歳になってから自宅を失うことになるかもしれないのです。
これは夫に愛人がいて、生まれた子を認知している場合なども同じです。愛人には相続権はありませんが、認知した子には実子と同じ相続権があります。
【図表1 家族構成図】
〈ケース3〉妻の子を養子にしている場合
実は、妻は再婚で、前夫との間に子どもがいました。子は幼いので、苗字が母と違っても困るので、夫には養子として迎え入れてもらっていました。また、夫にも前妻がいて、実子が二人います。こういう場合、妻と子どもたち全員に等しく相続権があります。
妻の子と、夫の子二人はお互いに面識がありません。しかし、遺産分割協議は全員で合意しなくてはならないため、話し合いが必要です。
【図表2 家族構成図】
夫の死後に「隠し子」の存在が判明するケースも・・・
相続では様々な関係者の思惑や事情が錯綜します。こちらが進めたい方向と、他の相続人が考える方向とが合わないこともしばしばあります。当事者同士は血のつながりがあり、「これでいいかな」と思っても、当事者の配偶者や友人・知人がいろいろ意見を言い出し始め、こじれてくることもあります。
戸籍を取り寄せて確認し、相続人が他にいないかをチェックしておくことも必要かもしれません。相続が発生してから戸籍を調べたら、「実は夫に隠し子がいた」というケースもままあります。まるでドラマのような人間関係が、現実のお話としてたくさんあります。
ですから、リスクの確認は早くからやり続けたほうがよいでしょう。