前回は、「医院を継ぐ子」の相続分を増やしつつ、公平感を保つ方法とはどのようなものかを見てきました。今回は、各種の「特例・非課税枠」の活用で医院承継の税負担を軽くする方法を説明します。

特例を上手に使えば相続税の大幅な節減が可能

具体策5「国が用意した特例」を使い切りましょう

相続税には様々な特例や非課税枠があります。代表的なものでいえば、次のようなものがあります。

 

①贈与税の配偶者控除

②小規模宅地等の評価減 自宅敷地330㎡+事業用地400㎡まで8割減もしくは、貸付事業用宅地200㎡まで5割減

③生命保険の非課税枠 500万円×法定相続人数

④退職金の非課税枠 500万円×法定相続人数

⑤住宅資金に係る贈与税の非課税措置

⑥教育資金の一括贈与

⑦結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置

 

こうした特例や非課税枠を活用すれば、相続財産を大きく圧縮することができ、相続税を引き下げることができます。場合によっては相続税がかからなくなるご家庭も出てくるでしょう。

 

相続では、クリニックを継ぐ子の相続税負担が重くなりがちです。ですから、相続税の非課税枠はできるだけ後継者の子に使わせてあげてください。

 

生命保険と死亡退職金の非課税枠分だけでもバカになりません。法定相続人が配偶者と子二人の三人のご家庭であれば、このふたつの非課税枠を活用しただけでも最大で3000万円が非課税になります。

 

ざっくりとですが、相続財産3億円に対する相続税が約3000万円くらいです。すると、子が3億円を相続しても相続税がほとんどかからないことになります。それだけでクリニック承継のハードルがかなり低くなるのではないでしょうか。

配偶者への相続は「税額軽減特例」枠を確実に使い切る

ある二次相続の対策が必要な相談者のお話を伺うと、配偶者が生命保険の非課税枠も死亡退職金の非課税枠も使ってしまったケースがありました。顧問の先生もアドバイスされなかったようですが、これはとてももったいないことです。

 

配偶者にはもともと配偶者の税額軽減特例という大きな特例がありますから、わざわざ生命保険や死亡退職金の非課税枠に頼る必要はありませんでした。大きな非課税枠があり、その枠がまだ余っている妻に非課税枠を重ねるのはもったいないのです。

 

一次相続で後継者に非課税枠を使わせてあげていれば、大分助かったでしょうに、残念です。跡継ぎの子が大変苦しい思いをされました。そばで見ていてとても歯痒く、後継者の子が痛ましかったことを覚えています。

 

繰り返しになりますが、相続税の非課税枠はぜひとも税負担の大きくなる子に、めいっぱい使えるようにしてあげていただきたいと思います。

本連載は、2016年8月27日刊行の書籍『開業医の相続対策は「奥様」がやりましょう』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

開業医の相続対策は 「奥様」がやりましょう

開業医の相続対策は 「奥様」がやりましょう

芹澤 貴美子

幻冬舎メディアコンサルティング

開業医は、今、目の前にいる患者さんの命と健康を預かる、専門的な職業です。新しい医療技術のこと、新薬のことなど、たくさんの情報を常に仕入れていなくては務まりません。なかなかお金の知識を得るための時間はないのが現実…

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