「退職弔慰金規程」で退職金の受取人を指定しておく
医業を法人化されて、将来、出資持分の評価問題が予測される方は、退職金に関する規程を制度化しておくことが大切です。理事長という立場は、法人に雇用されているわけではありません。あくまでも法人から委任されているにすぎないのです。
規程を作成しておくことにより、死亡退職金の受取人を指定しておくことができます。
受取人が決められていれば、その死亡退職金は、他の家族と分け方を決めなくてもいいことになり、分割対象外の相続財産となります。つまり、遺産分割協議で争わなくていいのです。逆に、規程がなかったとしたら、死亡退職金は相続人たちで分け方を話し合わなくてはならない財産になってしまうのです。
ここまで、お読みになった奥様は、もうピンときていらっしゃることと思いますが、後継者に、この死亡退職金を渡すことができたとしたら、納税資金や財産を分けるための調整資金として、どれだけ有効な財源になるか計り知れません。
個人開業医も退職金を有利に受け取れる「共済制度」
こんなにもメリットのある退職所得を、個人開業医の先生も使うことができるよう、国が小規模企業共済法に基づいてつくった共済制度があります。
生存退職のときは退職所得として半額課税、相続のときは死亡退職金として500万円×法定相続人数が非課税になります。
死亡退職の場合、受け取る順位も制度で決められていますので、分割対象外ではありますが、誰が受け取ることになるのか、注意を払う必要があります。
また、差押禁止債権として保護もされています。万一、相続財産の中に借金があったとしても、この退職金を借金の補塡(てん)にもっていかれることはないのです。そのことも、リスクヘッジとしてぜひ知っておいてください。