前回は、なぜ「遺留分への配慮」が円満な財産分割のカギとなるのかを見てきました。今回は、「医院を継ぐ子」の相続分を増やしつつ、公平感を保つ方法を説明します。

相続した財産で「相続税の支払いができるか」を確認

図表1は、相続税の早見表です。これで大体の税額を把握します。財産をもらった人たちが納税できるのか確認するとともに、法律で決められている遺留分を侵害していないかを確認することが、重要なポイントになります。

 

【図表1 相続税の納税金額確認表(目安)】

存命時から相続のことを考えてバランスをとる

「バランスのいい分割を」とはいうものの、実際問題としてクリニックの承継を含めると、どうしても後継者の子の取り分が多くなるのは仕方ありません。それはそれとして、公平感を保つには、どうすればよいのかを考えていただきたいのです。兄弟みんなが仲良くしていくためには、後継者に納税資金と遺産分割を調整するための資金(代償交付金)を、どのように準備させるかが大切です(図表2参照)。

 

相続以外でも、結婚資金や家を建てるときの資金を援助してあげるなど、親が生きているうちに子や孫にしてあげられることもたくさんあります(ただし、特別受益にあたる場合があるので注意。特別受益については書籍『開業医の相続対策は「奥様」がやりましょう』第2章のポイント4で説明しています)。

 

「相続ではあなたに多くをあげられないけど、その分、こうして今、あなたにこれだけのことをするからね」と紙に書いておくといいです。相続のときに「そういえば、自分はあのとき住宅資金をもらったな」とか「子育ての資金援助をしてもらった」と子が思い返してくれるでしょう。そうすれば、たとえ多くない遺産でも怒りを鎮めてくれる可能性が出てきます。

 

また、金銭的なフォローも大切ですが、心理面でのフォローは金銭以上に大切です。子らの心にしこりを残さないために、母親としてできることを考えていただければと思います。

 

【図表2 遺産分割の例】

本連載は、2016年8月27日刊行の書籍『開業医の相続対策は「奥様」がやりましょう』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

開業医の相続対策は 「奥様」がやりましょう

開業医の相続対策は 「奥様」がやりましょう

芹澤 貴美子

幻冬舎メディアコンサルティング

開業医は、今、目の前にいる患者さんの命と健康を預かる、専門的な職業です。新しい医療技術のこと、新薬のことなど、たくさんの情報を常に仕入れていなくては務まりません。なかなかお金の知識を得るための時間はないのが現実…

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