兄弟姉妹の仲が良くても相続がスムーズとは限らない
クリニックの後継者には、医業財産が集中しがちなので、後で兄弟姉妹仲が悪くならないように、奥様はバランスを考えて分け方を決めてください。
高額な出資持分をもらった子どもは、他の兄弟姉妹から遺留分減殺請求をされることも考えられます。そうならないように幼い頃からの教育が大切ですが、相続が起こるのは子どもが50代、60代になってからのことです。どういう状況になっているかは、誰にもわかりません。
もし生活費や健康問題、住宅ローンに教育費など出費がかさむ時期に相続が発生したら、「もらえるものなら、もらっておきたい」と考えるのは、至極当たり前の気持ちではないでしょうか。
「お兄ちゃんの病院経営も大変かもしれないけど、うちの子だって高等な教育は受けさせてやりたい」という感情を、果たして誰が抑えることができるでしょう。
「うちの子たちは、とても仲良しだから、相続で揉めたりしない。大丈夫」は、今だから言える言葉なのかもしれません。
「遺留分の侵害」で遺産分割が振り出しに戻ることも
財産の配分を考える際にとくに配慮していただきたいのは、すべての相続人が笑顔になれるかたちに近づけることです。まったく平等にというのは難しいと思いますが、なるべく子同士で財産の偏りを少なくするのが争族を避けるポイントになります。ですから、分割を考えるときは子どもたちの顔を思い浮かべながら、シミュレーションしてほしいと思います。
不満そうな顔、悲しそうな顔、暗い顔、恨めしそうな顔をしている子はいませんか? 立場の弱い子を守れる分け方になっていますか。
遺留分には十分に注意をしてください。遺留分を侵害してしまうと遺留分の減殺請求を起こされ、遺産分割が振り出しに戻ってしまいます。
【図表 法定相続人と遺留分】