(写真はイメージです/PIXTA)

23年第2四半期の国内の不動産取引総額は、前年同期比13.6%のマイナスとなり、市場の停滞が続いています。本稿ではニッセイ基礎研究所の渡邊布味子氏が、国内不動産市場の動向について解説します。

今後は国内外の貸出債権の処理動向に注意か

世界の不動産市場では、オフィス用途を中心に厳しい投資環境が続いている。これに対して、好調を維持する国内不動産市況が、世界の不動産市況の影響をどのくらい受けるのかが目下の着目点だろう。
 

2023年第2四半期の国内不動産投資市場では外国資本を中心にオフィスへの投資需要が減退し、代わりに物流施設とホテルの取引が増加して、全体の取引額減少を補った。この結果、国内不動産投資市況は比較的安定して推移している。
 

MSCIリアル・キャピタル・アナリティクスのレポートでは「東京都心5区オフィスの利回りは、ゆっくりと上昇し始めた」との記述はある2ものの、国内キャップレートについての主要な公表データである日本不動産研究所やCBREのレポートでは利回りの上昇はまだ確認できない。

 

また、仮に理論上のキャップレートが上昇し始めているとしても、実際に所有者が下落した価格で不動産を売却しなければキャップレートの上昇が取引事例として顕在化することはない。つまり、売買数量の停滞はあるものの、現時点では国内不動産の価格の上昇傾向が大きく転換しているわけではないと考えることができる。
 

仮に市況が大きく転換するとすれば、従来の水準よりも下落した価格で売買が成立するようになる前に、それを見越して不動産取得資金の借入金の債権者による債権売却などの処理が発生し始めたときだろう。

 

アジア太平洋地域内に拠点を置く不動産投資家の一部には、このような不動産関連の債権売却や借り換えの獲得を海外不動産市場における今後の戦略とするケースも増加している。国内不動産投資市場の今後については、海外市場と同様なことが起きるかどうか、国内不動産を担保とする貸出債権の動向に注意したい。

 


2 取引事例から得られた利回りのトレンドを把握したものではあるが、市況のトレンドと見るには追加の事例の蓄積が必要だろう。

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年8月21日に公開したレポートを転載したものです。

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