(写真はイメージです/PIXTA)

マレーシアの23年4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比2.9%増。3.3%増としていた市場予想を下回る結果となりました。本稿ではニッセイ基礎研究所の斎藤誠氏が、4-6月期のマレーシアのGDP評価と先行きについて解説します。

23年4-6月期実質GDP成長率は市場予想を下回る

2023年4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比2.9%増1(前期:同5.6%増)と低下し、市場予想2(同3.3%増)を下回る結果となった(図表1)。


4-6月期の実質GDPを需要項目別に見ると、主に輸出の落ち込みが成長率低下に繋がった。GDPの6割弱を占める民間消費は前年同期比4.3%増となり、前期の同5.9%増から低下した。
 

政府消費は前年同期比3.8%増(前期:同2.2%減)と増加に転じた。
 

総固定資本形成は同5.5%増(前期:同4.9%増)と改善した。建設投資が同6.0%増(前期:同7.5%増)と鈍化した一方、設備投資が同4.4%増(前期:同2.6%増)とやや持ち直した。

 

なお、投資を公共部門と民間部門に分けてみると、全体の4分の3を占める民間部門が同5.1%増、公共部門の伸びが同7.9%増となり、それぞれ改善した。
 

純輸出は実質GDP成長率への寄与度が▲0.1%ポイント(前期:+2.1%ポイント)と大きく低下した。まず財・サービス輸出は同9.4%減(前期:同3.3%減)と減少幅が拡大した。輸出の内訳を見ると、財貨輸出(同14.8%減)が2桁減少となる一方、サービス輸出(同41.4%増)は大幅な増加が続いた。

 

また財・サービス輸入も同9.7%減となり、前期の同6.5%減から更に低下した。

 

 

供給側を見ると、第二次産業の悪化と第三次産業の鈍化が成長率低下に繋がったことが分かる(図表2)。



まずGDPの6割弱を占める第三次産は前年同期比4.7%増(前期:同7.3%増)と鈍化した。

 

運輸・倉庫(同13.5%増)が2桁増となり、また宿泊・飲食業(同9.5%増)や不動産・ビジネスサービス(同8.0%増)、政府サービス(同5.5%増)も堅調に拡大した一方、金融・保険(同4.7%減)が減少すると共に、前期まで好調だった卸売・小売(同4.7%増)や情報・通信(同3.6%増)が鈍化した。
 

第二次産業は前年同期比0.3%減(前期:同3.5%増)と小幅に減少した。まず製造業は同0.1%増(前期:同3.2%増)と停滞した。

 

内訳を見ると、化学製品(同4.1%増)と食品加工(同3.0%増)は緩やかな伸びとなったが、主力の電子機器(同1.9%減)やゴム製品(同12.4%減)は減少、動植物性油脂(同0.5%増)と輸送用機器(同0.3%増)が低成長となった。

 

また建設業は同6.2%増(前期:同7.4%増)と堅調な伸びを維持したが、鉱業は同2.3%減(前期:同2.4%増)と、プラントのメンテナンスの影響を受けて1年ぶりに減少した。
 

第一次産業は猛暑の影響により同1.1%減(前期:同1.0%増)と減少した。その他農業(同6.6%増)は増加したが、主要産品であるパーム油(同6.9%減)が落ち込んだほか、漁業・養殖業(同2.8%減)や水産業(同0.5%減)、畜産(同0.3%増)が低迷した。


1 2023年8月18日、マレーシア中央銀行が2023年4-6月期の国内総生産(GDP)を公表した。
2 Bloomberg調査

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年8月18日に公開したレポートを転載したものです。

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