(写真はイメージです/PIXTA)

23年第2四半期の国内の不動産取引総額は、前年同期比13.6%のマイナスとなり、市場の停滞が続いています。本稿ではニッセイ基礎研究所の渡邊布味子氏が、国内不動産市場の動向について解説します。

外国資本の国内不動産購入の動向(2023年第2四半期)

世界の不動産投資市場では取引額の減少が続いている。

 

2023年第2四半期の世界の不動産売買額は約2,690億ドル(約39兆円)、前年同期比▲47.4%となった。エリア別ではアジア太平洋が▲30.1%、ヨーロッパ・中東・アフリカが▲57.2%、南北アメリカが▲62.4%といずれも減速しているが、アジア太平洋の落ち込みが比較的緩やかな状態が続いている(図表4)。

 

国別では資金力のある先進国のほとんどで取引額が停滞している。自国の不動産市況が低調な中では他国への積極的な投資も進みにくい。
 

ただし、このような状況のなかでも用途や国・地域を選別して投資している投資家もいる。

 

英国のオルタナティブ投資データの会社であるプレキンの調査によると、2023年第2四半期の世界の投資家の不動産投資戦略(今後12ヶ月)は、コア(48%、前年同期比▲7%)と、コア・プラス(40%、前年同期比▲7%)が減少し、バリュー・アッドが56%(前年同期比+12%)に増加した(図表5)。

 

つまり、世界的な不動産価格の下落傾向から不動産投資戦略は「高額であっても優良な物件に長期投資する方針」から変化し、「収益性が高まる見込みの不動産に投資して賃料を引き上げ、資産価値を向上させる方針」が主流となっている。

 

 

 

2023年上期の外国資本による国内不動産の購入総額は▲16.2%であり、投資が控えられる傾向ではある。

 

しかし、2023年第2四半期は約5,094億円で、前年同期比+18.5%と回復した(図表6)。GICが8億ドル(約1,062億円、今期最大額の取引)で取得した物流施設のポートフォリオや、ガウキャピタルとEGWアセットマネジメントとKKRが約4億ドル(571億円)で取得した小田急センチュリービルディング(ハイアット リージェンシー東京)など、少数の大型取引が取得総額を押し上げた。

 

 

 

また、2023年第2四半期の外国資本の国内不動産投資額における各国・地域の割合は、米国が30.1%(前年同期比▲6.0%)、シンガポールが27.0%(+14.7%)、英国が11.3%(+4.0%)となった(図表7)。

 

従来、外国資本のシェアは米国が全体の4割前後を占めていたが、2021年半ばごろから米国からの投資は減少し、2023年第2四半期ではシンガポールを中心にアジア太平洋地域内からの投資が増加している。

 

 
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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年8月21日に公開したレポートを転載したものです。

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