申告不要の年間110万円以下でも証拠は残しておくべき?
税務署から定期贈与と疑われないためにも、毎年、贈与者と受贈者が贈与契約書を作成しましょう。それぞれ契約書に署名・押印して贈与が行われていれば、税務署へ定期贈与ではないことを示す証拠になります。
贈与契約書に記載する内容は、主に次の通りです。
・贈与者・受贈者の氏名・住所
・贈与金額
・贈与する期限
・贈与方法(指定口座への入金等)
なお、現金を贈与する場合は銀行振り込みを利用した方が良いでしょう。なぜなら、銀行振り込みにすれば履歴が残り、契約書通りの内容で贈与された事実が一目でわかるからです。
110万円以下の生前贈与をするときの注意点
贈与の際は贈与契約書の作成の他、気を付けなければいけない点も存在します。
贈与税の税負担に注意する
贈与税が暦年課税となるとき、誰でも利用できる控除は、基本的に基礎控除額110万円しかありません。そのため、贈与を受け取ると贈与税が課される可能性は高くなります。
一方、相続税の場合は法定相続人が取得する相続財産に、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)が適用されます。
つまり、法定相続人が1人だけでも相続時に3,600万円もの控除額を利用できるわけです。
その他、相続税の税率・控除額は下表の通りです。
取得金額によっては7,000万円を超える控除額が適用される場合もあります。一方、贈与税が課される場合の控除額は最高で640万円(特例贈与財産・贈与額4,500万円超の場合)です。
相続税の基礎控除額および課税される場合の控除額と比較してみると、贈与税の基礎控除額や課税される場合の控除額が低い分、贈与の方が重い税負担となるおそれもあります。
相続開始前3年以内の贈与は相続財産にカウントされる
贈与者(被相続人)が基礎控除額110万円を利用し贈与する方法で、コツコツ財産を譲渡し、相続税の節税対策を実行している場合もあります。
しかし、相続開始前3年以内の贈与は110万円を超えなくても、相続人の相続税課税価格にこの贈与額が加算されます(生前贈与加算)。
つまり、相続財産に相続開始前3年以内の贈与分を含め、相続税を計算しなければいけません。そのため、贈与者がこの方法で相続税対策を進めたいならば、なるべく早く贈与を実行に移した方が無難です。