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法改正に伴い、近年企業における「パワハラ」はより厳格に取り締まられるようになってきました。本連載は、弁護士である山浦美紀氏の著書『パワハラのグレーゾーン-裁判例・指針にみる境界事例-』(新日本法規出版)より、一部抜粋して紹介。実際の現場で起こり得る企業のグレーゾーンな事例を取り上げながら、弁護士が分かりやすく解説します。

期待している部下にいつもより高いレベルの業務を命じるのは…

部下の育成を理由に、現状任せている業務よりも少しレベルの高い業務を命じた。

 

仕事の能力が高く、今後を期待している部下がいます。より一層の育成を図るために、上司である私自らのフォローの下で、現在の業務よりも少し高度なレベルの業務を任せようと考えているのですが、部下の負担にならないか心配です。このような仕事を任せることは、パワハラに該当するのでしょうか。

弁護士の見解は

上司が部下の育成のために、上司のフォローの下、現在の業務よりも少し高度なレベルの業務をさせることは、「過大な要求」には当たらず、雇用管理上の措置義務の対象となるパワハラには該当しません。パワハラ指針2(7)ニ(ロ)①においても、「労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せること」は「過大な要求」に該当しないと考えられる例として挙げられています。

「過大な要求」に該当するか

上司が、部下の育成を図るために、上司自らのフォローの下で、現在の業務よりも少し高度なレベルの業務を任せることは、パワハラの6類型のうち、「過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)」に該当するかどうかが問題となる行為です。具体的には、パワハラの定義のうち、「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動かどうかという問題となります。

 

上司の業務は、部下の指導や育成にありますから、部下の育成のために高度なレベルの仕事をさせることは、業務上必要な行為といえます。ただ、何のフォローも指導もなく、部下にレベルの高い仕事を任せっぱなしにすることは、「相当」な行為とはいえません。しかし、きちんと、部下の仕事の進捗を把握し、相談があれば適宜アドバイスを与えるなど、フォローをすれば、それは、「過大な要求」には該当しません。

 

パワハラ指針2(7)ニ(ロ)①においても、「労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せること」は「過大な要求」に該当しないと考えられる例として挙げられています。

次ページ「大和証券ほか1社事件」での実際の判例では…
パワハラのグレーゾーン-裁判例・指針にみる境界事例-

パワハラのグレーゾーン-裁判例・指針にみる境界事例-

山浦 美紀

新日本法規出版

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