ヒト・モノ・カネの大量投入はもう通用しない…米中貿易摩擦から不調が続く「中国経済」【伊藤忠総研・主任研究員が解説】

ヒト・モノ・カネの大量投入はもう通用しない…米中貿易摩擦から不調が続く「中国経済」【伊藤忠総研・主任研究員が解説】

1978年の経済政策を起点に急成長を遂げた中国経済。2017年の米中貿易摩擦を機にその雲行きは悪化しました。そこで本記事では、株式会社伊藤忠総研・主任研究員の趙瑋琳氏の著書『2030年中国ビジネスの未来地図』より、データから過去45年の中国経済の歩みを紐解いていきます。

1978年からの中国経済の歩み

1978年に鄧小平政権が打ち出した「改革・開放」と呼ばれる経済政策を起点とし、この数十年で中国経済は、破竹の勢いで成長を遂げました。

 

[図表1]は、1978年から 2021年までの中国の実質GDP成長率の推移と主な出来事をまとめたものです。図表を見ていただければわかりますが、成長の過程では戦略変更や路線調整、外部環境の変化による打撃など様々なことが起きていました。

 

出所:CEICデータベース、中国国家統計局の公開データを基に作成
[図表1]中国の実質 GDP 成長率の推移と主な出来事 出所:CEICデータベース、中国国家統計局の公開データを基に作成

 

(注1) 先富論:鄧小平氏が1985年頃に「改革・開放」の中で打ち出した基本的理念の1つで、一部の地域と一部の人が先に豊かになり、豊かになった地域と人々が、まだそうでない地域と人々を助けること

 

(注2) 南巡講話:鄧小平氏が1992年初頭に武昌、深圳、珠海、上海などを視察し、社会主義か資本主義かというイデオロギー論争より、「改革・開放」の加速を呼びかけた一連の発言

 

二桁成長は2010年が最後…2012年「習近平政権」の発足

2012年には、習近平政権が発足し、経済の二桁成長時代は終わりを告げました。新政権は高度成長から中高速成長へ舵を切り、年平均7%前後で推移する成長率を「新常態 (ニューノーマル)」と表現。貧困脱出とともに、所得倍増計画(2020年までに2010年比 で国民所得を倍増させる計画)を立てました。

 

ところが、2017年に勃発した米中貿易摩擦は米中対立へと深刻化します。さらに2020年の新型コロナウイルスの感染拡大で、内陸都市の武漢がロックダウン(都市封鎖)されました。この内憂外患で中国経済が大きなダメージを受けたため、所得倍増計画はあと少しのところで達成できずに終わることになりました。

 

一方で、習近平国家主席は、2020年を期限とした、農村地域における貧困層の貧困からの脱出は実現したと主張しています。この貧困脱出を前提として、2021年7月に行われた共産党建党100周年記念式典で習近平国家主席は、「小康(ややゆとりのある)社会」を全面的に実現したと宣言したのです。

 

2020年には、習近平政権が「共同富裕(共に豊かになる)」を提唱し、脱炭素を実現する「3060目標」を掲げました。両方ともハードルの高い課題でありながら、画餅に終わらせることが許されない重要な宣言です。

 

2021年3月には、「第14次5ヵ年計画・2035年長期目標」が正式に公布されました。GDPに関して具体的な数値目標は設定されなかったものの、2035年までに2020年比でGDPを倍増させようとしており、年平均で換算すればGDP成長率は4.7%をキープする必要があります。

 

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2030年中国ビジネスの未来地図

2030年中国ビジネスの未来地図

趙 瑋琳

東洋経済新報社

気鋭の研究者が中国の「新消費」・「新ブランド」・「新市場」を徹底解説! 日本人がまだ知らない一歩先の中国ビジネスとは? 「世界の工場」から「世界の市場」へと変貌した中国ですが、「常に変化し、唯一、変化していない…

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