ローソンがコンビニ業界で初めて導入した「セルフレジ」は、20%の売上アップをもたらしました。その要因はどこにあったのでしょうか。当時、ローソンでセルフレジの開発を担当した市原義文氏の書籍『アイデアをお金に変える「マネタイズ」ノート:新商品、新事業をつくる人は、最初にどこを見ているのか?』(三笠書房)より一部抜粋して紹介します。 

コンビニ業界初の「セルフレジ」は「引き算」から生まれた

◆「引き算」で考える

アイデアをつくる際に、あれもこれもと追加しててんこ盛りにしていませんか? 日本製の家電が世界で以前ほどの評価を受けなくなって久しいですが、その一因として、使いもしない機能ばかりを付加したために競争力を失ったことがあるといわれています。

 

筆者は、アイデアをつくる際に、お客様を中心にして「引き算で考える」ことを大切にしています。あれもこれもと追加するのではなく、不要なものをどんどん削ぎ落としていくのです。そして、最後に残ったものが、お客様にとって便利で、わかりやすいものであれば、これもアイデアの組み合わせ方の1つだと考えています。

 

たとえば、筆者がローソンで開発した「コンビニ業界初のセルフレジ」は、お客様を中心にして「引き算で考える」ことによって実現したアイデアです。当時のローソンは、「店舗現場の人手が足りない」という問題を抱えていました。「セルフレジ」は、その問題を解消するアイデアとして考えたものです。

 

◆事前に「制約条件」を明確にする

引き算で考える時に大切なのは、事前に「制約条件」を明確にしておくことです。制約条件とは、「アイデアを組み合わせる際、絶対に外してはならない条件」のこと。どんなにすばらしいと思えるアイデアだったとしても、制約条件を無視したアイデアでは、実現性が低くなってしまうのです。

 

制約条件を明確にするには、参考になる情報が必要です。そこで筆者は、当時、大手スーパーなどで試験的に導入が始まっていたセルフレジを、できるだけ多く見て回ることにしました。すると、次のような制約条件が見えてきたのです。

 

【「コンビニのセルフレジ」の開発における制約条件】

・設置場所はレジカウンター

・(操作指導できる)余分なスタッフはいない

・万引きをどう防ぐか

・袋詰めできるスペースがない

・お客様は不慣れ

・新規投資額はできるだけ少なく

・既存POSレジの流用もOK

 

…といった具合です。

 

大手スーパーのセルフレジは非常によくできていましたが、コンビニで使うには大きすぎました。コンビニは30坪ほどの広さでビジネスを展開するため、坪当たりの収益をとても気にします。収益を生まないものは基本的に設置しません。どうしても設置が必要だとしても、サイズはできるだけ小さいほうがいいのです。


このように、制約条件がわかったら、小さなポストイットに1個ずつ書いて、それを1枚ずつ方眼ノートに貼っていきます。次に、現状のPOSレジに備わっている機能をポストイットに全部書き出し、これも方眼ノートに貼っていきます。たとえば、次のようになります。

 

・弁当販売

・飲料販売

・雑誌販売

・現金で支払い

・クレジットカードで支払い

・公共料金支払い

 

…このように、レジに備わった機能は膨大でした。

 

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次ページ不要な機能を引き算し、20%売り上げアップ
アイデアをお金に変える「マネタイズ」ノート:新商品、新事業をつくる人は、最初にどこを見ているのか?

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市原 義文

三笠書房

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