(写真はイメージです/PIXTA)

英中央銀行のイングランド銀行が8月3日、政策金利を0.25ポイントアップの5.25%に引き上げるなどの金融政策方針を公表しました。本稿ではニッセイ基礎研究所の高山武士氏が、今回の金融政策委員会で発表された金融政策の概要について解説します。

 

中期的なインフレ見通し

  • インフレ見通しは、報告書で議論されている政策金利を5.25%で据え置くとした代替シナリオでも予測期間を通じて概ね類似している
    • これは政策金利の経路が異なっていても目標に回帰する証左となっている
    • 市場観測の金利カーブは現在の政策金利より数四半期は高くなるが、その後に低下して先々3年間の平均では5.5%をやや下回る

 

  • 経験的モデルは短期的なインフレ率低下の経路を考慮したインフレ予想に基づいて賃金が設定された場合に何が起こるかを示している
    • しかし、現在のところ賃金がこのように設定されると確信できるだけの証拠はない
    • MPC見通しでは、MPCにおける最善の総合的判断を反映しており、賃金の伸びはこれらのモデルが予測するよりも緩やかになると予想されている

 

  • 経験的モデルの出力と委員会における最善の総合的判断との間には違いがあるが、これは大きな不確実性に勅命する世界において、我々のプロセスをどのように適応させるべきか、についての重要性を示す一例である
    • ベン・バーナンキ氏が中銀の予測および関連プロセスの見直しを主導することに同意してくれたことを嬉しく思う

 当面の政策決定

  • 6人の委員がこの会合で政策金利を0.25%引き上げ、5.25%にすることが妥当だと判断した
    • 最近のデータはまちまちである
    • しかしながら、いくつかの鍵となる指標、特に賃金伸び率は大きく上振れており、サプライズとなっている
    • これは中期的な均衡失業率が上昇し、広範囲にわたる国内でのインフレ圧力がより持続的な形で顕在化するリスクとなっている
    • これに対し、失業率はわずかに上昇し、求人・失業比率は前回の会合以降、さらに低下している
    • ここ数四半期の経済の驚くべき回復に対し、最近の指標は活動の鈍化しており、経済が重要な転換点にある、もしくは近づいていると結論付けるのは時期尚早である
    • 金融政策姿勢は経済活動のおも足となっているものの、この会合での政策金利の0.25%の引き上げが、より強いインフレ圧力へのリスクに対処するのに必要である

 

  • 2名の委員はこの会合で政策金利を0.50%ポイント引き上げ、5.5%にすることが妥当だと判断した
    • この委員らにとっては、8月の報告書に記載されたように、一連の見通しは過少評価されており、インフレの持続性に対処するためにより積極的に傾斜することが重要であった
    • この委員たちは労働市場のひっ迫が継続していることに言及した
      • 求人・失業比率は低下しているものの、長期平均よりもかなり高い水準にあった
    • さらに民間部門の賃金上昇にかんする高頻度データは上昇トレンドが続いており、均衡失業率が上昇した可能性と整合的であった
    • 後で引き締めることによるコストを抑制するため、この会合での政策金利の強力な引き上げがインフレ率を中期的に2%目標に戻す助けになる

 

  • 1名の委員はこの会合で政策金利を5.00%に維持することを希望した
    • 政策スタンスはかなり制限的になり、リスク管理の観点からは、さらなる引き締めを行う強い根拠はもはや存在しない
    • 代わりに、引き締めすぎるリスクが積みあがっており、生産の急転換を必要とするような生産損失や変動の可能性が高まっている
    • 金融政策効果のラグにより、過去や最近の利上げの影響、特に住居費用への累積的な影響の大部分が依然として顕在化していない
    • 最近の消費者および生産者物価指数の構成要素にかんする情報はCPIインフレ率の低下基調を強く示している
    • 賃金インフレは事業サービス部門で最も強かったが、実質賃金は、それ以外の産業で低下し、全雇用の4分の3を占めている
    • 制限的な政策スタンスを踏まえて、主要品目のインフレが今年にかけて緩和し、労働環境もさらに緩和することで、賃金上昇率は鈍化していくと見られる

 運用上の考慮事項

  • 8月MPRのボックスAで議論されているように、委員会は23年10月から24年9月までの12か月間における国債残高の削減目標について、23年9月の会合で投票を行う

 

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年8月4日に公開したレポートを転載したものです。

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