3.金融政策の方針
今回のMPCで発表された金融政策の概要は以下の通り。
- MPCは、金融政策を2%のインフレ目標として設定し、持続的な経済成長と雇用を支援する
- 委員会は政策金利(バンクレート)を0.25%ポイント引き上げ、5.25%とする(6対2対1で決定1)、2名は0.50%ポイント引き上げ5.50%とすることを主張し、1名は現状維持で5.00%とすることを主張した
- 委員会は8月の金融政策報告書(MPR)で経済とインフレ率の見通しを更新した
- そこでは、市場観測の政策金利経路として、ちょうど6%を超えるまで金利が引き上げられ、予測期間の3年間での平均では5.5%をやや下回ることが前提となっている。一方、5月報告書時点では4%をやや上回るという前提だった。
- ポンド為替レートは5月報告書より約4%上昇している
- 四半期ベースの基調的なGDP成長率は今年上半期でおよそ0.2%となった
- 中銀スタッフは、家計所得や小売数量、最近の多くの企業調査の回復を反映して、短期的には同じような成長率となると見ている
- しかし、S&P Global/CIPSが公表する7月の総合PMIなど、さらに直近の指標では弱さの兆しがみられている
- 労働市場は引き続きひっ迫しているが、いくつか緩和を示す指標も見られる
- 労働力調査による失業率は、2-5月で4.0%に上昇し、5月報告書での見通しよりやや高い。求人・失業比率も引き続き低下しているが、過去平均よりも依然として高い水準にある
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民間部門の定期賃金上昇率は2-5月に7.7%上昇し、5月報告書の予想よりもかなり上振れており、3か月平均の3か月前比もさらに加速した
- それでも、今後数四半期の賃金は低下して年末には6%近くになると見られるが、短期的な不確実性がある。
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CPIインフレ率の前年比は5月の8.7%から6月には7.9%まで低下し、前回会合時の見通しよりも下振れた
- このうちコア財とサービスインフレのいずれも予想より下振れたが、持続的なインフレ圧力に寄与しやすい後者に関するインフレ低下に関する情報はかなり限定的だった
- 5月の報告書と比較すると6月のCPIインフレ率は予想通りとなった
- 8月のMPCによる、市場観測の金利を前提にした見通しの最頻値では、CPIインフレ率は25年4-6月期までに目標の2%に低下する
- 中期的には、外的な価格上昇圧力が低下するなかで経済の弛みが国内のインフレ圧力を軽減するため目標を下回る
- 委員会はこの最頻値の見通しにインフレ率が持続的になる上振れリスクを組み込むことを決定し、5月報告書と比較して中期的なインフレ率が押し上げられている
- 委員会は、外的価格ショックによって引き起こされる国内価格と賃金動向の2次的効果により、それが発生した時よりも、解消される際に時間を要するため、最頻値見通しのリスクが、5月の見通しほどではないが、上方に傾いていると引き続き判断している
- 平均インフレ率はこのリスクが織り込まれており、2年先および3年先のインフレ率をそれぞれ2.0%、1.9%としている
- MPCの責務が、英国の金融政策枠組みにおける物価安定の優位(primacy)を反映して、常にインフレ目標の達成であることは明らかである
- この枠組みでは、ショックや混乱の結果、物価が目標から乖離する場合があることを認識する
- 金融政策により、CPIインフレ率が中期的に2%目標に安定して戻るようにする
- 最近のデータはまちまち(mixed)である
- しかしながら、いくつかの主要な指標、特に賃金伸び率は、より持続的なインフレ圧力が具体化してくるかもしれないというリスクを示唆している
- この会合で、委員会は政策金利を0.25%ポイント引き上げ、5.25%とすることを決定した
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今回の引き締めサイクル開始以降の政策金利の大幅な上昇によって、現在の金融政策姿勢は制限的である
- MPCは引き続き、労働市場のひっ迫感や賃金上昇率、サービス物価インフレの動向といった、経済全体におけるインフレ圧力の持続性と回復力について、引き続き注視する
- 仮により永続的な圧力があるのであれば、より引き締め的な金融政策が必要となる
- MPCは、その責務にもとづき、インフレ率を中期的な2%目標に安定的に戻すため、政策金利を十分な期間にわたり十分に制限的にする
1 今回反対票を投じたのは、ハスケル委員、マン委員およびディングラ委員。このうち、ハスケル委員とマン委員が0.50%の利上げを主張、ディングラ委員は据え置きを主張した。なお、前回はディングラ委員およびテンレイロ委員が反対票を投じて現状維持を主張した(テンレイロ委員は7月で退任し、今回は後任のグリーン委員が参加)。
4.議事要旨の概要
記者会見の冒頭説明原稿や金融政策報告書および議事要旨の概要(上記金融政策の方針で触れられていない部分)において注目した内容(趣旨)は以下の通り。
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GDP成長率見通しは、2023年0.50%、24年0.50%、25年0.25%
(5月時点では23年0.25%、24年0.75%、25年0.75%)-
CPI上昇率は、2023年5%、24年2.5%、25年1.5%(10-12月期の前年比)
(5月時点では、23年5%、24年2.25%、25年1%) -
失業率は、2023年4.00%、24年4.5%、25年4.75%(10-12月期)
(5月時点では、23年3.75%、24年4%、25年4.25%)
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CPI上昇率は、2023年5%、24年2.5%、25年1.5%(10-12月期の前年比)
- 通貨・金融情勢に関連して、委員会は、特に英国において市場金利が経済データに対して、過去10年の平時と比較してより敏感になっていることを議論した
- 市場参加者はインフレの持続性に関する先行指標として通常以上にデータを重視していると見られる
- 英国では中銀の市場参加者調査の回答者は、引き続き、賃金上昇率、労働市場のひっ迫具合、サービス物価上昇率を英国の金融政策の先行きを予想する上で最も重要な指標だと回答しており、MPCの最近のコミュニケーションと整合的である
- それにもかかわらず、これらのいくつかの指標は月によって変動が大きい
- 委員会は金利上昇が個人消費や設備投資を押し下げる影響と、エネルギーと食料品価格の鎮静化による所得の押し上げ効果が経済におよぼす影響についてのバランスについて議論した
- 総合すれば、これらの要因は年後半の成長率に対して小幅ながらプラスの影響となると示唆された
短期的なインフレ見通し
- ガス電力市場監督局(Ofgem)の電気・ガス価格の上限によって卸売エネルギー価格の消費者物価への転嫁が減速することを前提にすれば、インフレ率はここ2週間のうちに公表される7月のデータでさらに低下して約7%に、10月には5%まで一段と低下すると予想される
- サービスインフレ率の上振れサプライズはより変動の大きい構成要素、例えば航空運賃、パック旅行、および経済の需給バランスとは無関係の自動車税(Vehicle Excise Duty)によって生じた
- こうした理由のため、我々はこのサプライズを過大評価すべきではない
- しかしながら、他のサービスインフレの構成要素は英国の基調的なインフレ率と関連があり、サービスインフレの持続的な強さが、高インフレを長期化させる可能性がある
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