一人の専門家でカバーすることは難しい相続対策
高度な税務の専門家として、税理士がいます。税務署に提出する相続税の申告書には税理士の署名捺印が必要ですから、相続税がかかってくるご家庭については、必ず税理士先生にお願いする場面が出てきます。
それ以外では、不動産の価値を判定してもらうのに不動産鑑定士が必要になったり、家族で揉め事が起きたときには弁護士が必要になります。相続を専門にしている司法書士や公認会計士などもいます。
けれども、いずれの専門家にしても相続やクリニック承継の全般を一人でカバーすることは難しいでしょう。とくに開業医の相続は相続の中でもかなり特殊ですから、そつなく対処できる専門家となると、本当にごく一部に限られてしまいます。
そういう意味では、不動産のことは不動産鑑定士に、税務のことは税理士に、トラブル解決は弁護士に、というようにポイントごとにそれぞれの専門家を配置するのが理想的です。各専門家に得意分野で力を発揮してもらうのです。
ただし、複数の専門家がバラバラに動くと統制が取れなくなってしまうので、彼らをコーディネートし、全体でチームとして動かすことのできる調整役が必要になってくると思います。
その調整役として最もふさわしいのは「生命保険に精通したフィナンシャルプランナー」だと私は考えています。なぜなら、生命保険は資産家の方々の相続では外せないからです。生命保険の活用や有効性についてはこの後お話ししますが、実は生命保険は、節税にも納税資金の確保にも代償分割の資金確保にも役立ちます。
また、遺産の少ない子へのフォローとして渡す資産としてや、将来の資産形成・貯蓄としてなどの使い道もあります。まさに八面六臂の活躍をする頼もしい存在です。
FPは、相続だけでなく現在や将来にわたってお客様のリスクを見通し、様々な手段を使ってそのカバーを提案するのが仕事です。また、コンスタントにお客様と関わり、お客様自身やそのご家族の変化、時流の変化などに合わせて、生命保険の見直しや変更などをしていきます。
つまり、お客様の情報を深いところまで一番把握しているのは、生保系のFPだと思います。ですから、生命保険を正しく扱えるFPを中心に置き、そこから各専門家にネットワークを広げてチーム構成をしていくのが一番スマートではないかと考えます。
ただし、生命保険は非常に奥が深く、プロでもなかなか扱いきれない人も多いのが現状です。”あなたの立場に立って一緒に将来を考えてくれるFP”を見つけるべきです。心あるFP、生保をよく理解しているFPをかかりつけにすれば、相続の場面でも必ずや力になってくれるに違いありません。
家族環境に変化があったときは、相続対策も随時変更を
相続対策というものは、これで「完璧」という状態は、どれだけ対策を講じてもありません。それは、人の気持ちは「時」とともに変化してしまうからです。
生活環境も、法律も、変わっていきます。川の流れのように、緩やかなときもあれば、激流になってしまうときもあります。それでも、とどまることは決してありません。だから、そばにいる奥様の存在がとても大切です。家族に変化があったとき、「はっ!」と気づいて、「大丈夫かな?」と確認してください。
筆者は、相続事業承継対策において、生命保険の果たす役割がとても大きいことに気づき、相続争いをなくすために、お客様へのコンサルティングのほかに、生命保険業界に向けての教育活動を展開しています。コンサルティングの第一人者を師と仰ぎ、全国から真摯に学ぼうとするFPの仲間たちと学び続けることで、着実に力をつけていっています。
ただ、多くのお客様を守りきるためには、まだまだ絶対数が足りません。お客様のお役に立てる“信頼できる相続アドバイザー”をもっと増やしていくことが、これからの筆者の任務だと思っています。