アメリカ、そして中南米の現実
何年も続く不景気、失業、治安悪化で自国を見限り、アメリカに不法移民する人々が絶えない中南米では、事態はさらに深刻です。
貧困層の若者たちをマフィアなどが吸収、社会不安はますます増大。景気が悪く、仕事がなく、まともな生活ができないため、麻薬密売、誘拐などの悪事に若者たちが手を染めています。
社会不安の増大、不安定化の拡大が、中南米やアフリカ諸国では驚くほどのスピードで増大している。それが中南米からアメリカ、アフリカからヨーロッパへの難民の増大となって表れています。
これに比べれば日本はまだ大丈夫。以前ほどではありませんが、中産階級層もまだ一定の層が残っています。
外国の事例を見れば一目瞭然ですが、社会不安は、中産階級が非常に少ない国で起こっているという事実を注視しなければなりません。社会不安が増大すれば、格差はますます拡がり、それが負のスパイラルとなってあらゆる領域へと連鎖していくでしょう。
ウクライナ侵攻を続けるロシアも、国内を見ればプーチン大統領とその側近、ごく限られた政権上層部だけが富を独占している。一極集中型の独裁資本主義になっているのです。
日本から「中流層」が消える!?
年月日を基に運命を占う中国発祥の算命学を、私は時々、世の中の大局の流れを読むうえで参考にしています。この算命学関連の書物で名著とされるのが高尾義政の『悠久の軍略』。
この本では、「昭和60年ごろまでは、まだ日本にも巨大な中階級層、中間層があった」「アメリカでは中間層が激減している。いずれ近い将来、日本でも同様な現象が起こる」と指摘。
また社会の人口構成は、ごく一部の富裕層と、膨大な数の貧困層とに分かれ、中間に位置するはずの中間層、中流階級がどんどん減少していく、と予測。今まさにその通りになっています。
つまり中間層が次々と貧困層へと脱落している。そして貧困層が巨大化し、それに比例して中間層が激減していく。その結果、恐ろしい経済的格差社会が生まれていく。日本は現在進行系でその方向へ向かっています。
アメリカでトレーラーに住む人々は、1日3食の食事をフードスタンプ(低所得者に対して行なわれる食料費支援政策。スーパーマーケットなどで使用できる最大月100ドル相当の金券)でしのぎ、教会で食事をもらうなどして生活しています。
フードスタンプの受給世帯は、いまや2,000万世帯に迫る勢いです(2018年は1,940万世帯。約3,900万人が利用)。
(注)フードスタンプ……アメリカ農務省の栄養補充支援制度(SNAP)のことで、低所得者向けの食料支援制度。日本円で10兆円近い予算規模。3億3,000万人の人口の12%がSNAPを受給しているとされる。